2009 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック解析技術を用いた心不全の病態解明と新規治療法の確立
Project/Area Number |
21790747
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
金田 るり Keio University, 医学部, 助教 (70465029)
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Keywords | エピジェネティクス / 心不全 / ヒストン修飾酵素阻害薬 |
Research Abstract |
心不全の病態には、エピジェネティックな変化のうち、核内ヒストン蛋白のアセチル化が重要な役割を果たすと、これまで国内外より報告されてきた。しかしながら、我々が検討した、疾患モデル動物であるDah1ラットの心筋を試料としたChIP-on-chipの解析結果からは、ヒストンのアセチル化よりも、ヒストンH3リジンK4(H3K4)のトリメチル化およびH3K9のトリメチル化領域が不全心と正常心で大きく異なることが明らかとなった。2009年度は、H3K9のトリメチル化に影響を及ぼすことが予測されるヒストン修飾酵素の阻害薬(Chaetocin:H3K9ジメチル化→トリメチル化をきたすSuv3.9の酵素活性を阻害)を、Dah1ラットに腹腔内投与し、心不全の病態に及ぼす影響を検討した(各群n=2)。Chaetocinの投与により、心不全期のラットにおいて、心重量/体重量比の増加が抑制され、心房性Na利尿ペプチド遺伝子の心筋内発現上昇が軽度に抑えられた。さらに、心エコー上、Chaetocinを3週間投与した群で、左室駆出率(Ejection fraction: EF)に回復傾向が認められ、より長期間(7週間)投与した群では、ほぼ正常レベルまでEFが復することも明らかとなった。現在のところ検体数が少なく、今後さらに検体数を増やし観察期間も延長した追跡が必要であるが、ヒストン修飾酵素阻害薬(H3K9のメチル基転移酵素阻害薬)が心不全の予後を改善しうる可能性が示唆された。
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