2010 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素暴露が肺動脈性高血圧症を誘導するメカニズムの解析
Project/Area Number |
21790748
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 隆司 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (90407114)
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Keywords | 低酸素 / 肺動脈性高血圧症 / 血管内皮細胞 / BMP受容体 / シンバスタチン |
Research Abstract |
低酸素暴露により誘導される肺動脈性肺高血圧症(PAH)の発症機転を追究するため、低酸素暴露肺動脈内皮細胞に固有の発現変化を示す分子の同定を試みた。ヒト正常肺動脈、大動脈、臍帯静脈内皮細胞を通常(21%O_2)または低酸素(1%O_2)条件下で培養し、遺伝子アレイ、定量的PCRを行った。その結果、低酸素暴露によるBMP受容体であるBMPR-IAとBMPR-II遺伝子の発現低下は肺動脈内皮細胞に特異的であった。 (1)低酸素暴露による各種血管内皮細胞における蛋白発現変化の検討(免疫ブロット法):BMPR-IA、BMPR-II蛋白発現は肺動脈内皮細胞では経時的に低下した。大動脈内皮細胞、臍帯静脈内皮細胞では肺動脈内皮細胞と同様の変化は認められなかった。 (2)下流遺伝子の発現変化の検討:BMP受容体シグナルに特異的な下流遺伝子としてID3が知られている。そこで、低酸素暴露によるBMP受容体の発現変化がID3発現に及ぼす影響を検討した。低酸素暴露肺動脈内皮細胞のID3遺伝子発現はBMP受容体の遺伝子発現の低下とともに低下した。他の血管内皮細胞のID3遺伝子発現は変化しなかった。 (3)シンバスタチンのBMP受容体発現に及ぼす影響:HMG-CoA還元酵素阻害薬であるシンバスタチンを肺動脈内皮細胞培養液に添加し、遺伝子発現を解析した。低酸素暴露肺動脈内皮細胞のBMP受容体の遺伝子発現は低下したが、シンバスタチン添加により、BMP受容体の発現低下が抑制された。 以上の結果から、低酸素暴露によるPAH誘導の機序の一つとして、内皮細胞増殖抑制に作用するBMP受容体の発現低下が考えられた。シンバスタチンはBMPシグナル不全を是正することで、PAHの発症予防に有用な可能性が考えられた。
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