Research Abstract |
去年度まで,in vitro(6種類のヒト悪性中皮腫細胞)及びin vivo(ヒト悪性中皮腫の皮下モデル)を用い,AMPK活性剤であるAICARの投与が細胞の増殖とマウス皮下での成長の抑制効果を見出した.皮下モデルの組織免疫染色分析(ki67染色)に関しては対照群に比べ,AICAR投与が約40%の組織内の細胞の増殖を抑制したことが分かった.更に,もっと臨床に近いモデル(胸腔モデル)を作成し,AICARはモデルマウスの生存率に対する影響を検討した結果,対照群の生存期間の中央値(範囲)は20日(15-22日)であった.これに比べて、AICAR投与群(1kg体重あたり100mgのAICARを毎日投与)の生存期間の中央値(範囲)は29日(22-33日)であった(P<0.05). 今年度は主にin vitroとin vivoのメカニズムの解明に携わった. まず,in vitro,Annexin Vによるアポトーシス検出の検討を行なった.500ug/mlのAICARの投与が,48時間後に,対照群の細胞に比べ,約10%のアポトーシス細胞を増やしたことが分かった.更に,BrdUの細胞周期解析では500ug/mlのAICARの投与が,48時間後に,対照群の細胞に比べ,約15%のS期細胞を抑制したことが分かった.この2つの観察したことに関しては細胞内のシグナルであるp53/phosphor-p53及びAkt/phosphor-Akt,p70/phosphor-p70をWestern blotting analysisを用い,検討した.結果はAICARの投与が細胞のp53,phospho-p53の発現量を増加し,phosphor-Aktとp70/phosphor-p70の発現量を減らした.in vivoでは皮下モデルのサンプルを用い,TANELによるアポトーシス検出の検討を行なった. AICARの投与が,対照群に比べ,TANEL陽性細胞の割合が有意に増えることは観察された.シグナルに関してはin vitroと同じようにp53/phosphor-p53及びAkt/phosphor-Akt,p70/phosphor-p70をWestern blotting analysisを用い,検討した.結果はAICARの投与がp53,phospho-p53の発現量を増加し,phosphor-Aktとp70/phosphor-p70の発現量を減らした. 以上の結果から,AICARがp53とmTORシグナルを経由し,ヒト悪性中皮腫のin vivoでの成長を抑制し,生存期間を延長した.これらの結果を踏まえ,論文をまとめる上で臨床への研究に進みたいと思う.
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