Research Abstract |
我々は,ヒト細胞を標準化することで,病原体DNAコピー数を半定量できるReal-time PCR法(HIRA-TAN法:human-cell controlled identification of respiratory agent-痰)を開発し,PCRで検出された病原体を治療対象と非治療対象とにカットオフ値を用いて鑑別している(特許第4665203号).呼吸器感染症に本発明を応用し,包括的に肺炎の原因微生物を同定するための臨床試験を実施した(UMIN試験ID 000001694).試験参加9施設で2009年2月3日から2010年10月14日にかけて,計568名の肺炎症例が登録された.そのうちHIRA-TANで原因微生物を同定できたものが349例(61.4%),既存の診断方法で同定できたものが321例(56.4%)であった。発症場所別でみると、568名のうち市中肺炎CAP 349例,医療ケア関連肺炎HCAP 147例,院内肺炎HAP 72例であり,おのおの原因微生物はCAP 198例(56.7%),HCAP 78例(53.1%),HAP45例(62.5%)で診断された.Commensal Organism(検出されたものが定着菌か起炎菌か鑑別しないといけない病原体)において,既存の同定法とHIRA-TANのカットオフ値を用いた同定法とを比較検証した.二項分布で95%信頼区間をもとめ,HIRA-TANの同定法と既存の同定法の割合は、H. influenzae 0.90 (26/30 ; 95% Cl, 0.70-0.95)またP.aeruginosa 0.89 (40/45 ; 95% Cl, 0.76-0.95)であった.ほかの病原体についてもK.pneumoniae 0.72 (26/36 ; 95% Cl, 0.55-0.84), S.pneumoniae 0.84 (90/107 ; 95% Cl, 0.81-0.90)であった.本発明は,既存の診断方法と卑劣性のない診断力にくわえ,迅速性,包括性,また医療費をおおはばに削減できる検査であることを証明できた.
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