2009 Fiscal Year Annual Research Report
ペルオキシゾーム増殖因子受容体の迅速シグナル伝達系を介した心腎相関作用の意義
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21790798
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀田 晶子 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 助教 (20534895)
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Keywords | PPARγ / 心腎相関 / シグナル伝達系 / チアゾリン / 近位尿細管Na再吸収 / 種差 / Src / ERK |
Research Abstract |
本研究は核内受容体ペルオキシゾーム増殖因子受容体(PPARγ)を介した迅速シグナル伝達系の詳細とこの系による心腎機能への影響を明らかにするために立案されたものである。今年度はまずこのシグナル伝達系におけるSrcの意義を明らかにするために、Yes/Fyn/c-Src欠損マウス(Cell 64:693, 1991)より樹立した胎児線維芽細胞(SYF-/-)およびc-Src発現のみ回復させた細胞(YF-/-)を用いて、チアゾリンによるERK活性化、およびNHE1活性化の度合いを比較検討した。その結果、チアゾリンによるERK活性化、およびNHE1活性化はYF-/-細胞では認めたものの、SYF-/-細胞では全く認めなかった。このことからPPARγを介した迅速シグナル伝達系にはSrcが必須であることが示唆された。一方、単離した近位尿細管を用いた微小潅流実験を行い、チアゾリンはウサギ・ラットの近位尿細管再吸収を著明に増大させるが、マウスの近位尿細管再吸収には影響を与えないことを確認した。こうしたチアゾリン作用の種差の原因を検索するために、Src/ERK経路の活性化の度合いをWestern blot法により検討したところ、ウサギとラットの腎皮質においてはチアゾリンによるSrc/ERK経路の著明な活性化が確認された。一方、マウスの腎皮質においてはSrc/ERK経路が恒常的に活性化しており、チアゾリンによる活性化を認めなった。さらにin vivoでチアゾリン急性投与後のクリアランス実験を行ったところ、ラットでは尿量減少ならびにリチウムクリアランスで評価した近位尿細管Na再吸収の亢進を認めたが、マウスでは同様の反応を全く認めなかった。以上よりPPARγの迅速シグナル伝達系を介したチアゾリンの近位尿細管Na再吸収亢進作用にはSrcが必須であることが示された。
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