2010 Fiscal Year Annual Research Report
ペルオキシソーム増殖因子受容体の迅速シグナル伝達系を介した心腎相関作用の意義
Project/Area Number |
21790798
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀田 晶子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20534895)
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Keywords | チアゾリン / PPARγ / 糖尿病 / NHE1 / 近位尿細管 / 体液量 |
Research Abstract |
本研究においては,糖尿病治療薬チアゾリンの副作用である,体液貯留の機序についての解明を行った。本年度は,まず野生型およびPPARγ-/-のマウス胎児線維芽細胞(EF細胞)を用いて,チアゾリンによるNHE1活性化の有無を調べた。各種シグナル伝達阻害薬や転写活性阻害薬などを用いた詳細な検討により,野生型EF細胞ではPPARγ依存性かつnon-genomicなシグナル伝達によりERKが活性化していることが判明した。 この作用を転写因子の作用と区別できることを証明するため,マウスPPARγ1のコンストラクトをPPARγ-/-のEF細胞に導入した。PPARγ1全長を導入した細胞ではチアゾリンによるNHE1活性の亢進及びERKのリン酸化が見られた。さらに,PPARγ1のligand binding domain (LBD)も,転写活性を欠いているにも拘らず同様の作用が認められたが,結合能のないLBDの変異体ではチアゾリンによるNHE1活性の亢進及びERKのリン酸化は認められなかった。他詳細な検討により,NHE1活性の亢進にはPPARγの結合能が必要だが転写活性は必要でないことが判明した。 また,Src-/-のEF細胞を用いて行った解析では,Src-/-の細胞では野生型細胞と異なりチアゾリンによるNHE1活性の亢進,及びERKのリン酸化は見られなかったが,PPARγ発現は双方で認められ,SrcがPPARγ依存性のnon-genomicなシグナリングに必要であることが証明された。また,他詳細な解析により,チアゾリンにより誘導されるPPARγとSrcの結合がPPARγ/Src/EGFR/ERKのシグナリングに必要であることが判明した。 一連の研究により,チアゾリンによる体液量増加の機序に,PPARγ依存性のnon-genomicな近位尿細管の輸送亢進も含まれることが証明された。この研究は雑誌Cell Metabolismにacceptされ,2011年5月に掲載予定である。
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