2009 Fiscal Year Annual Research Report
視神経脊髄炎におけるアクアポリン4関連免疫病態の解明
Project/Area Number |
21790829
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三須 建郎 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 助教 (00396491)
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Keywords | アクアポリン4 / アストロサイト / 視神経脊髄炎 / 多発性硬化症 / アクアポリン4抗体 |
Research Abstract |
<臨床的検討:NMO疾患活動性マーカーとしてのGFAPの有用性> 我々は、世界に先駆けて視神経脊髄炎(NMO)病巣においてアクアポリン4(AQP4)が欠落していることを報告したが、この結果NMOの免疫病態としては、早期からアストロサイトが障害を受けるのに対して、脱髄は二次的に生じていることが示唆された。そこで、NMO患者におけるアストロサイト障害ならびに髄鞘障害を臨床的に検討することを目的に、アストロサイト障害マーカーとして髄液中GFAP、S100Bを、脱髄マーカーとして髄液中MBPを測定し、それぞれ臨床評価項目との関連解析を実施した。 その結果、NMOの髄液中GFAP濃度(2476.6±8815.0ng/ml)は多発性硬化症(MS)における髄液中GFAP濃度(0.8±0.4ng/ml)と比較して圧倒的に有意に高く、一方髄液中MBP濃度には有意差が認められなかった。NMOにおける髄液中GFAP濃度は、臨床的障害度(EDSS)や脊髄病変長とも強く相関が認められ、臨床的指標として適当であると考えられた。これらの結果から、急性期におけるNMOの病態はMSとは異なる圧倒的なアストロサイト障害を背景にして生じていることが示唆され、MSにおける脱髄とは異なる病態を有することが示唆された。 <アクアポリン4抗体は病原性を有する抗体である> AQP4抗体の病原性の有無を知る上では、AQP4抗体による細胞モデルや動物モデルを解析することが不可欠である。In vitroの検討では、ヒト一次培養アストロサイトを用いて、患者血清から抽出したIgGを補体介在性・非介在性に作用させ、抗アクアポリン4抗体による細胞障害の有無を検討した。その結果、アクアポリン4抗体は補体介在性に壊死性細胞障害を誘導することや、補体非依存性にアストロサイト足突起を縮退させ細胞形態を変化させることが判明し、アクアポリン抗体による細胞障害は、補体介在性・非介在性の病態があることが示唆された。 我々はVienna Univ.との共同研究により、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のミエリン特異的T細胞による自然発症モデルに、NMO患者血清から抽出したIgGを腹腔内投与し、NMO患者の病理学的特徴を再現できるかを検討した。その結果、患者血清から抽出したアクアポリン4抗体によりアクアポリン4およびGFAPの脱落病変が主に灰白質周辺に再現良く生じることが見出された。これらのNMO病理は、血液脳関門が脆弱な幼少期などでは発症せず、単純に血液脳関門を越えるだけではない免疫病態の関与が示唆された。 これらの結果から、抗アクアポリン4抗体は病原性を有するNMOに関連した因子であることが強く示唆され、その事実を国際誌・国際学会で発信し、この分野に貢献できていると考えている。今後は、この抗体の産生機序や治療法の開発などを含めて、さらに研究の発展を続けていく予定である。
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Research Products
(11 results)