2009 Fiscal Year Annual Research Report
血液脳関門を介したAβ蛋白の脳からの除去促進機構の解明
Project/Area Number |
21790841
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
佐野 泰照 Yamaguchi University, 医学部附属病院, 助教 (20379978)
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイド蛋白 / 血液脳関門 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)に特徴的な老人斑アミロイドはAβ蛋白からなり,Aβの蓄積がADの発症や進展に関与しているとされている.また,ADでは血液脳関門(BBB)が破綻するとの報告があるが,この機序については不明のままである.我々が新たに構築したヒトin vitro BBBモデルを用い,1)Aβ蛋白自体がBBBにどのような影響をおよぼすのか,2)Aβ蛋白はBBBを介してどのように排出されるのか,の2点を解明することを目的に本研究を開始した.直径0.4μmのポアを有するcell culture insertの底面にtype Iコラーゲンを塗布した後,ヒト脳微小血管内皮細胞を播種し,ヒトin vitro BBBモデルとした.このモデルの上側のコンパートメントにAβ40およびAβ42蛋白を添加し,バリア機能を表す指標である電気抵抗値がどのように変化するかを検討した.また,同じ実験系で,Aβ蛋白添加48時間後に内皮細胞からmRNAを抽出し,密着結合構成分子であるclaudin-5, occludin, ZO-1の発現がcontrol群(Aβ蛋白を添加していない群)のそれらの発現量と異なっているかどうかをリアルタイムPCRにて検討した.結果,Aβ40蛋白を添加した群ではcontrol群に比し電気抵抗値も密着結合構成分子の発現量も有意な差は認めなかったものの,Aβ42蛋白を添加した群ではcontrol群に比し電気抵抗値が有意に低下し,密着結合構成分子のうちclaudin-5の発現量が有意に低下した.このことはAβ蛋白,とくにAβ42蛋白自体がBBBを破綻させている可能性を示唆する非常に興味深い実験結果であり,ADにおけるBBBのバリア機能不全を理解する上で非常に有用な知見となりうる.この結果もふまえた上で, H22年度にはAβ蛋白のBBBからのくみ出しのメカニズムを解析する予定である.
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