2010 Fiscal Year Annual Research Report
リピートRNA結合タンパク質MBNLのポリグルタミン病における役割
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21790854
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
紀 嘉浩 独立行政法人理化学研究所, 構造神経病理研究チーム, 研究員 (80415140)
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Keywords | ポリグルタミン / RNA結合タンパク質 / 選択的スプライシング / 神経変性疾患 / 筋強直性ジストロフィー |
Research Abstract |
ポリグルタミン病は翻訳領域内に存在するCAGリピート配列の伸長によって引き起こされる神経変性疾患群の総称である。これらの疾患では、原因遺伝子自体の機能や変性部位および症状に違いが見られるが、ポリグルタミン伸長タンパク質の発現と封入体形成など、共通性も存在する。伸長したCAGリピートを含むmRNAの発現もポリグルタミン病に共通しており、伸長ポリグルタミン含有タンパク質の発現に必須な中間産物であることから、ポリグルタミン病治療標的として有望であると考えられる。私は、以前の研究から、RNA結合タンパク質MBNL1(muscleblind-like1)がCAGリピート結合性を示すことを見出していた。そこで本研究では、MBNL1がCAGリピートおよびポリグルタミンの発現に及ぼす影響を検討した。 培養細胞系において、CAGリピートを持つ疾患遺伝子およびレポーター遺伝子とMBNL1の共発現を検討した結果、MBNL1がCAGリピート長依存的に発現制御を行うことが明らかとなった。また、MBNL1は伸長したCAGまたはCUGリピートのRNAとの核内封入体を形成するが、この封入体の核局在はMBNL1自体の構造と局在性に依存することがわかった。そこでMBNL1の局在性決定要因を詳細に調べたところ、古典的および新規の核局在シグナルの存在が示唆された。興味深いことに、核局在シグナルの有無は選択的スプライシングを介して自己調節され、他の複数のスプライシング制御因子によっても制御されることが明らかとなった。 これらの結果から、MBNL1がポリグルタミン病の伸長CAGリピートの制御タンパク質であり、その機能性の決定要因が明らかとなった。
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