2010 Fiscal Year Annual Research Report
多発性硬化症モデルの予後に関連する再発・寛解維持の制御機構?自己免疫ワクチン
Project/Area Number |
21790855
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
林 幼偉 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 免疫研究部, 併任研究員 (80392439)
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Keywords | 免疫学 / 脳・神経疾患 / 制御性細胞 |
Research Abstract |
多発性硬化症(以下MS)は中枢神経系に脱髄病変を生じ、症状の再発・寛解を繰り返す神経難病であり、代表的な動物モデルとしては脳炎惹起性ペプチドの感作で誘導される実験的自己免疫性脳脊髄炎(以下EAE)があり、現在では単相型・再発寛解型・慢性型などMSの多彩な経過に類似した様々なモデルが作成されている。しかし感作ペプチドは動物種や系統に依存していることからEAEの臨床経過も遺伝的に一律であると思われてきた。 我々は脳炎惹起性ペプチドが複数同定されているSJL/Jマウスにおいては感作ペプチドの違いによって全く異なる臨床経過をとることを発見し、遺伝的素因によらない再発寛解の機構を解明する糸口と考えた。まず再発寛解型のモデルとして広く使用されているPLP139-151によるEAEがさらに寛解後にどのペプチドで追加免疫しても再誘導されるのに対し、これと重複するPLP136-150によるEAEは一切再発しない単相型で、寛解後に追加免疫しても再誘導されず寛解を長期に維持するという大きな違いを示すことを見いだした。その違いが末梢リンパ節に寛解期以降で誘導されるCD4^+CD25^+Foxp3^+制御性T細胞(Treg)が長期に高値で維持されるか否かという量的な動態の違いと、最も制御能の高いCD69CD103共陽性の分画(DP-Treg)を多く含むか否かという質的な違いによることを発見し、そしてこのDP-Tregは特にCTLA4, ICOS, LAG3, FR4などの主要なTreg関連分子の発現が他の分画より圧倒的に高くIL10やLAPの産生も特に多いこと、CCR2, CCR5やCCR6などが常に高くCD62LやCCR7が低いeffector cellであり炎症性細胞と動態を共にして適材適所で作用すること、Foxp3とRORγtを共発現しIL-17も少量産生しつつIL-6Rが持続して低いために炎症性Th17細胞に転化しにくい特殊な一群であることが証明された。また脳炎惹起性ペプチドにはヒエラルキーがあり優位性が高いペプチドほどそれで誘導したEAEはむしろ再発・再誘導されにくく、上記のDP-Tregの誘導能と相関することを明らかにした。さらにこれはEAEを誘導しない条件でも有効であることが判明し、自己免疫ワクチンへの布石と考えた。
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