2010 Fiscal Year Annual Research Report
パーキンソン病関連遺伝子GIGYF2のシグナル伝達における機能解析
Project/Area Number |
21790856
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Research Institution | 財団法人東京都医学研究機構 |
Principal Investigator |
東 晋二 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 東京都精神医学総合研究所, 研究員 (30365647)
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Keywords | パーキンソン病 / 神経変性 / GIGYF2 / インスリンシグナル / Grb10 |
Research Abstract |
昨年度我々はGIGYF2の発現がリサイクリングエンドソームの膨大化を引き起こし、IGF-1受容体の膜輸送を変化させることを明らかにした。本研究の主要な目的の1つであるGIGYF2とシグナル伝達の関係を評価するため、GIGYF2発現細胞を使用してIGF-1刺激が引き起こすシグナル伝達経路の影響を調べた。IGF-1刺激はIGF-1受容体をリン酸化させ、その後下流のシグナル伝達分子であるERK1/2とAktのリン酸化を引き起こすことが知られているが、GIGYF2の発現はIGF-1受容体とAktのリン酸化に変化を与えず、ERK1/2のリン酸化のみを増強した。またsiRNAによりGIGYF2の発現量を減少させた細胞でも同様に調べたところ、やはりERK1/2のみでリン酸化の減弱が起きていた。このことから、GIGYF2の受容体の膜輸送の変化は、その受容体のリン酸化には変化を与えないものの、その下流のシグナル伝達経路を選択的に調整することができると考えられた。また本研究のもう1つの主要目的であるGIGYF2とパーキンソン病(Parkinson's disease : PD)の関連についても調べた。家族性PDで同定された2つの遺伝子変異、N56SとN478TのGIGYF21を発現させた細胞にIGF-1刺激を与えたところ、野生株と比較してERK1/2を含む上記分子のリン酸化に変化はみられず機能的な変化は存在しなかった。またPD患者の剖検脳を使用して、他の家族性PD関連たんぱく質にみられる不溶性の変化やレビー小体への局在を調査したが、GIGYF2はPD脳で不溶性の変化はなく、レビー小体への局在も認められなかった。PDは黒質緻密部のドーパミン細胞の変性により線条体のドーパミン量が減少することによりパーキンソン症状が出現する疾患であるが、GIGYF2の発現量は黒質緻密部と線条体では比較的微弱であった。このように本研究ではGIGYF2とPDの病態機序との関連性について否定的な結果であったことから、GIGYF2が家族性PDの原因遺伝子であることを証明するにはさらなる検討が必要と考えられた。
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Research Products
(6 results)