2010 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪細胞における脂質代謝酵素lipinの発現調節機構解明と代謝異常治療への応用
Project/Area Number |
21790857
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
高橋 伸彦 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (20372279)
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Keywords | 脂肪細胞 / メタボリックシンドローム / Lipin |
Research Abstract |
Lipinは様々な代謝機能を調節する分子として知られています。動物実験やヒトの研究から、脂肪細胞におけるlipin-1の遺伝子発現量は全身のインスリン感受性と正相関することが示されています。例えば、肥満やメタボリックシンドロームにおける脂肪細胞のlipin-1遺伝子発現量は低下していることが報告されています。このことから脂肪細胞のlipin-1を量的あるいは質的に高めることが、それらの代謝異常を是正する治療法の開発に結び付くのではないかとの仮説を立て検証を行いました。今年度は、脂肪細胞におけるlipin-1の遺伝子発現量低下は、なぜ全身の糖代謝悪化と関連するのか、そのメカニズムの一端を明らかにすることができました。具体的には、3T3-L1脂肪細胞におけるlipin-1の遺伝子発現量をRNAi法を用いて特異的に低下させ、その脂肪細胞を用い様々な代謝機能調節に関わる遺伝子の発現量を検討しました。その結果、lipin-1の低下が単球・マクロファージの遊走を促進させるmonocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1)の遺伝子発現量を増加させることを発見しました。さらにそのメカニズムとして、転写因子であるNF-κBが関わっているという知見を得ました。近年、肥満は脂肪組織の炎症としてとらえられています。これまでに私は、脂肪細胞のlipin-1遺伝子発現は炎症性サイトカインであるTNF-αによって低下することを見いだしています。この知見に今年度の研究で得られた成果を加味すると、肥満者や代謝異常患者にみられる脂肪細胞のlipin-1遺伝子発現量の低下は、直接的に脂肪組織へ炎症細胞を引き寄せ、一方、引き寄せられた炎症細胞からTNF-αが放出され、脂肪細胞のlipin-1をさらに低下させていくという新たな病態モデルが推測されます。つまり、lipin-1は脂肪組織における炎症の悪循環を担う分子の一つとして位置づける成果を得たと考えます。
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Research Products
(2 results)