2010 Fiscal Year Annual Research Report
自律神経系を介して脳が統御する糖・エネルギー代謝調節機構の解明
Project/Area Number |
21790859
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 哲也 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90400374)
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Keywords | 肥満 / 糖尿病 / エネルギー代謝 / 自律神経 |
Research Abstract |
個体は過栄養に対して、摂食抑制やエネルギー消費を亢進するという体重の恒常性維持機構を内在していることが示されてきた。そして、この機構が厳格に機能するならば、体重増加は生じないはずである。ところが、肥満人口が増加し続けている現状を鑑みると、体重の恒常性維持機構は、体重増加に関しては実に"寛容"であることを目の当たりにするが、過栄養時に体重増加が生じるメカニズムは、いまだに不明な点が多い。そこで本研究では、肥満2型糖尿病患者の肝臓において活性が上昇していることが報告されているグルコキナーゼ(GK)に着目した。アデノウイルスベクターを用いてマウスの肝臓選択的にGKを過剰発現させたところ、褐色脂肪組織(BAT)において、UCP1などの熱産生関連遺伝子の発現抑制が生じ、適応熱産生が低下し、体重増加が促進した。この肝臓GK-BAT組織間連関は、神経切断実験や脳内諸核の発現検討により、迷走神経肝臓枝を含む神経経路を介して生じることが示唆された。さらに、肝GK発現によっても、摂餌量には有意な変化は見られず、レプチン投与による視床下部におけるNPY発現抑制・POMC発現亢進作用には影響を与えなかったが、延髄吻側縫線核におけるc-fos発現は著明に減少し、中枢レプチン作用のうちエネルギー消費亢進作用を選択的に抑制することも明らかとなった。肝でのGK発現の変化が、臓器間神経ネットワークを介してBATにおける熱産生を調節していることが明らかとなった。最近、ヒト成人においても代謝活性のあるBATが存在し、BATの量はBMIと逆相関の関係にあることなどが報告された。肥満患者の肝臓GKが上昇していること併せると、ヒト成人においても、この肝臓-BAT組織間連関機構に介入し、肥満者では機能低下しているBATを再活性化することは、過栄養時代における肥満症治療のターゲットになりうるものと考えられる。
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