2009 Fiscal Year Annual Research Report
海馬におけるカンナビノイド受容体を介した脂肪酸伸長酵素Elovl6の役割の解明
Project/Area Number |
21790860
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石井 清朗 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 助教 (80419150)
|
Keywords | 脂質 / カンナビノイド / エネルギー代謝 / 海馬 |
Research Abstract |
本研究は、エネルギー代謝に重要な役割を持つ脂肪酸組成の変化が中枢神経系においても重要な生理的役割を持つという仮説を証明し、これに基づいた新しいメタボリックシンドローム治療法開発の基盤を構築することを目的としている。したがって、脂肪酸伸長酵素Elovl6 KOマウスの海馬を用い、カンナビノイド受容体カスケードに注目して、どのようなシグナル伝達経路により脂肪酸組成の変化が脳へ影響を与えているのかを検討した。まず、ラット胎児E17からの海馬のプライマリーカルチャーを用いて、内因性カンナビノイド受容体リガンド、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)および、ジアシルグリセロール(DG)からこの2-AGを合成するDGリパーゼの阻害薬、Orlistatを添加した。結果、神経の発達にこれらの薬剤が影響をあたえていることが分かり、内因性カンナビノイドが神経発達においてなんらかの働きをしていることを示すことができた。また、ラット胎児E17からアストロサイトを単離した後、同様に2-AGおよびOrlistatを添加し、増殖について検討した。その結果、増殖についても内因性カンナビノイドの影響がみられ、神経およびアストロサイト両方にカンナビノイドのシグナル伝達系が係わっていることが示唆された。さらにこの海馬における、神経細胞およびアストロサイト両方への作用は、Elovl6 KOマウスの海馬プライマリーカルチャーや海馬スライスでも観察され、脂肪酸伸長酵素とカンナビノイドの関係を示唆する結果となった。今後は脂肪酸伸長酵素とカンナビノイドシグナル伝達系の係わりを精査するとともに、高次元での脳機能を電気生化学および行動実験的手法を使って調べていく。
|