2010 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子FoxO1の膵β細胞増殖と新生における役割
Project/Area Number |
21790862
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小林 雅樹 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (80373041)
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Keywords | 糖尿病 / 膵臓 / 生理学 |
Research Abstract |
転写因子FoxO1の膵β細胞増殖や新生における生理的な役割を明らかにする為に、全膵臓FoxO1ノックアウト(KO)マウスを作成し高脂肪・高ショ糖食負荷を与えたところ、KOマウスにおいてインスリン陽性膵管細胞と小さなラ氏島の数の増加を伴う有意なβ細胞量の増加と、マウス個体における有意な耐糖能改善が認められた。そこで、ラットインスリンプロモーターCreマウスとFoxO1 floxマウスの交配により、β細胞FoxO1KOマウスを作製し表現型解析を行ったが、全膵臓FoxO1KOマウスのようなβ細胞量や耐糖能の変化は認められなかった。ことから全膵臓FoxO1KOマウスの高脂肪・高ショ糖食負荷によるβ細胞量増加は、非β細胞からのβ細胞新生亢進によるものである可能性が考えられた。 一方、高脂肪・高ショ糖食負荷より重度の糖尿病を呈するdb/dbマウスと全膵臓FoxO1KOマウスを交配させると、高脂肪・高ショ糖食負荷とは逆に全膵臓FoxO1KOマウスおいて耐糖能の有意な低下が認められ、単離ラ氏島のグルコース刺激に対するインスリン分泌応答はコントロールdb/dbマウスに比べ有意に低下していた。そこで、db/dbマウスにβ細胞FoxO1KOマウスを交配させたところ、全膵臓FoxO1KOマウスを交配させたときと同様の耐糖能および単離ラ氏島のインスリン分泌応答の低下が認められた。さらにdb/dbマウスと交配させた全膵臓およびβ細胞FoxO1KOマウスは共にコントロールのdb/dbマウスに比べ、成熟インスリン分泌顆粒数の有意な低下が認められた。これまでに得られた結果から、生体膵においてFoxO1はβ細胞新生を抑制している一方で、慢性的な高血糖による糖毒性の下ではβ細胞の機能保持に貢献しているという、機能の二面性を有することが示唆された。
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