2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790889
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
出村 昌史 金沢大学, 附属病院, 助教 (00507080)
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Keywords | DNAメチル化 / エピジェネティクス / 組織特異的プロモーター / アルドステロン / 肥大型心筋症 |
Research Abstract |
副腎と心血管のアルドステロン合成制御の違いにつき、2つのサブテーマで、本年度の成果を記す。 1.アルドステロン合成酵素遺伝子(CYP11B2)プロモーターのDNAメチル化;ヒト心筋におけるCYP11B2メチル化と遺伝子発現量の関係を明らかにすることに取り組んだ。その結果、(1)心筋でのCYP11B2プロモーターは、高メチル化状態であること、(2)メチル化の程度と遺伝子発現は逆相関すること、(3)さらには、心筋症では、低メチル化状態で、遺伝子発現も亢進していること、が判明した。低メチル化が心筋症からのアルドステロン産生亢進に関与することが強く示唆された。 2.CYP11B2転写を活性化する核内受容体の発現調節機構;CYP11B2活性化因子NR4Afamily (NGFIB, NURR1, NOR1)、抑制因子NR5A1(SF-1)の複数のプロモーターが、ヒト副腎、動脈、心筋、アルドステロン産生腫瘍、心筋症心筋でも発現していることが判明した。さらには、これら核内受容体のプロモーター使用頻度は、それぞれの組織で異なることが分かった。特に、NGFIBのプロモーター使用頻度は、アルドステロン産生腫瘍と動脈で有意に異なっていた。NGFIBの作用は、アルドステロン産生腫瘍ではCYP11B2転写促進、動脈では抗動脈硬化的である。アルドステロン産生腫瘍で活性が高く、動脈において活性の低い、プロモーターのみを抑制することにより、動脈でのNGFIBの機能を保持しつつ、アルドステロン産生腫瘍のみでCYP11B2の発現を抑制しうる可能性がある。これらの知見は、病的状態(アルドステロン産生腫瘍、心筋症)におけるアルドステロン産生の制御する新規治療への足がかりとなる。本年度は、心筋症、肥大心、不全心でCYP11B2プロモーターの脱メチル化が生じる機構を探るべく、転写因子の過剰発現により脱メチル化を誘導できるかどうか取り組む。
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