2010 Fiscal Year Annual Research Report
地域の医療機関における薬剤耐性菌の現状および対策に関する検討
Project/Area Number |
21790956
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
國島 広之 東北大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (60339843)
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Keywords | 感染症 |
Research Abstract |
現在、医療施設において様々な感染対策を行っているものの、多くのMRSA患者の他に、新たにESBLs産生菌をも検出されつつある。病院における通常の下痢を対象とした糞便検査ではClostridium difficileが主要な対象菌種となるため、通常検査におけるESBLsの分離頻度は、保菌率より低い可能性が高く、現状を評価することは困難である。また近年、欧米を中心に、耐性菌対策としてASC (Active Surveillance culture)による積極的な対応が実施され、MRSAの伝播及び感染症の低減が報告されている。平成21年度は研究計画に基づき、地域における社会福祉施設の同意が得られた入所者を対象とし、ESBLsについてスワブを用いて採取し、分離同定するとともに施設評価を行った。 ESBLsの検出状況は、施設Aでは36検体中11検体(30.5%)からESBLsが分離され、すべてProteus mirabilisであった。施設Bでは51検体中4検体(7.8%)からESBLsが分離され、すべてE.coliであった。施設Cでは20検体中4検体(20.0%)からESBLsが分離され、P.mirabilis 4株、E.coli 2株であった。合計、17.8%(19/107)からESBLsが検出された。E.coliはCTX-M産生株が100%、TEM型が31%、SHV型はみられなかった。P.mirabilisはCTX-M産生株が100%、TEM型およびSHV型はみられなかった。 平成22年度には施設評価を中心に行った。高齢者福祉施設でも年数を経過した施設では、入所者の介護度が高くなり、したがって、医療介入の傾向が強まりESBLs産生菌の検出頻度も高い傾向が見られた。環境評価では、環境の汚れの指標のひとつであるATPを用いて評価したが、良く触れる手すりや、体液の接触する頻度の多い吸引器や加湿器は汚染が多く見られた。引き続きESBLs産生菌の検出傾向はみられたものの、中等度耐性株が多くみられるように検出傾向が変化し、異なるクローンによる伝播が継続していることが示唆された。本検討により、社会福祉施設における効果的な感染対策の啓発の必要が考えられた。
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