2009 Fiscal Year Annual Research Report
MDRPに対する院内感染防止対策~伝播の制圧、耐性化機序の解明と治療戦略~
Project/Area Number |
21790962
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
吉澤 定子 Toho University, 医学部, 講師 (80424703)
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Keywords | 多剤耐性緑膿菌(MDRP) / 院内感染対策 / メタロβラクタマーゼ(MBL) / 水平伝播 / 抗菌薬選択圧 / 抗菌薬併用療法 / BC-plate法 / 耐性化機序 |
Research Abstract |
本研究では、MDRPに対する院内感染制御として、耐性機序に基づいた院内感染対策を実践した。MDRPの発生要因として、メタロβラクタマーゼ(MBL)産生が一因であることが知られており、当院の集計でも過去5年間に分離されたMDRP42株のうち79%がMBLを産生していた。MBL産生菌はプラスミドを介して菌から菌へ伝播するため接触感染対策が重要であり、当院では尿検体から分離される事が多い。これらの事から、蓄尿等に伴う水平伝播が生じていた可能性が考えられ、蓄尿形態に主眼をおいて院内環境を監視、整備を計画・実行し、院内伝播に及ぼす効果を検証した。次に、MDRP発生には抗菌薬選択圧が関連するため、抗菌薬長期投与者への病棟薬剤師による介入を開始した。 蓄尿体制調査としては、現場ラウンドとアンケート調査を用いた。その結果、蓄尿の際に尿カップが適切に交換されていない病棟が多い事が判明したため、正しい運用方法について周知し、77%の病棟で尿カップ運用方法が改善された。一方、病棟薬剤師により長期抗菌薬投与患者の担当医へ介入を行った結果、長期投与者数は有意に減少した(月平均18人→12人、p<0.01)。これらの対策により、耐性緑膿菌検出患者数(MDRPおよび2剤耐性緑膿菌の総数)は、有意に減少し(月平均5人→1人、p<0.01)、蓄尿に主眼をおいた水平伝播対策と長期抗菌薬投与者への対策は耐性緑膿菌検出数の減少に効果的手法であることが示唆された。 一方、BC-plate法による2007年4月~2008年11月に検出された耐性緑膿菌35株に対する抗菌薬併用療法の検討では、RFP+CL,PIPC+AMK,AZT+AMKといった組み合わせの有効性が高い事が示唆された。 今後もMDRP伝播の制圧および有効な治療法の確立を試み、MDRPの耐性化機序、さらに地域におけるまん延状況について検討を続ける予定である。
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