2011 Fiscal Year Annual Research Report
WAS腎症をモデルとしたIgA腎症の発症機構に関する分子免疫学的解析
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21790972
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
清水 正樹 金沢大学, 医学系, 助教 (10401902)
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Keywords | Wiskott-Aldrich症候群 / IgA腎症 / 糖鎖不全 |
Research Abstract |
本年度はWiskott-Aldrich syndrome protein (WASP)ノックアウトマウスにおける腎炎の詳細とIgA分子の糖鎖異常について論文発表を行った(shimizum et al. Clin Immunol 2012;142:160-6.)。ヒトでの検討については、血清IgA分子の糖鎖異常を検出するレクチンELISA法を用いて、計26例について解析を行った。その結果WAS症例では以下のことが判明した。1.WasKOマウスと同様、糖鎖異常を持つIgAが増加しでいた。2.糖鎖異常IgAは自己免疫疾患を合併している症例で有意に増加していた。3.IgA-IgG免疫複合体は糖鎖異常IgAと有意な相関を示し、WAS症例において増加していた。4.IgA-IgG免疫複合体は、WAS症例の中でも自己免疫疾患を合併する症例において有意に増加していた。5.糖鎖異常IgA、IgA-IgG免疫複合体とも年齢依存性に増加していた。6.骨髄移植により、糖鎖異常IgAの量は減少するとともに、糸球体沈着IgAも消失し、腎組織障害も改善していたことが判明した。これらの結果から、WAS症例において、IgA糖鎖異常は、WASに合併する自己免疫疾患の病態に深く関与している可能性が示唆された。また、IgA糖鎖異常量は、WAS症例に合併するIgA腎症の病勢モニタリングに有用であると考えられた。これらの成果をまとめ、学会発表するとともに、現在論文投稿中である。WASでは、O-glycanの異常を有することが知られているが、今後の課題としてWASにおいてIgA糖鎖異常を生じるメカニズムは依然不明であり、検討が必要であると思われた。今年度は患者由来B-LCLを用いてリンパ球産生IgAが遺伝子導入前後で糖鎖異常IgAの量がどのように変化するかの検出を試みたが、IgA陽性B-LCLの単離が不可能であった。今後採血後すぐにIgA陽性B細胞を分離し、IgA陽性B-LCLを樹立し、遺伝子導入後の変化を観察する必要がある。
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