2009 Fiscal Year Annual Research Report
再生不良性貧血におけるHIF-1αを介したVEGFの調節機構の解明
Project/Area Number |
21790999
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
児玉 祐一 Kagoshima University, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (20535695)
|
Keywords | 再生不良性貧血 / VEGF / HIF-1α |
Research Abstract |
再生不良性貧血の臨床経過はさまざまであり、急激に重症化し造血幹細胞移植等の治療が必要になる症例もあれば、一方で長期間重症化せずに経過する症例も存在する。これまでの後方視的な検討では、これらを鑑別する方法は見つかっていない。我々は、再生不良性貧血の病態に基づいた方法を確立する必要があると考えた。再生不良性貧血では、いくつかのサイトカインが重要な役割を果たしていることが知られる。血管内皮増殖因子(VEGF)は血管内皮細胞の増生や血管透過性に働くが、造血幹細胞の維持、再構築能に大変重要であることが知られている。これまでに我々は、慢性に経過する患者では血小板あたりのVEGFが、急速に進行する患者よりも有意に高いことが明らかにしていた。VEGFはその転写因子である低酸素誘導因子(HIF-1α)によって調節されている。本年度において、我々は再生不良性貧血患者の骨髄細胞中のCD34陽性造血幹細胞を用いて、VEGFとHIF-1αの発現量を検討した。評価した13症例の再生不良性貧血のうちCD34陽性細胞のうちリファレンス遺伝子が確認できたのが8症例であった。CD34陽性細胞が少ないことが原因と考えられた。この8例うち急性に進行した症例が7例、慢性の経過の症例が1例であった。Real time PCRによる検討ではVEGFは慢性の症例は急性の症例に比較して7倍高く発現していた。いずれの例でもHIF-1αは再生不良性貧血のCD34陽性細胞では発現量が少なかった。以上の研究結果からは再生不良性貧血患者のCD34陽性細胞において、VEGFは慢性期において増加し、急性増悪時には低下しているとわかった。さらにCD34陽性細胞ではHIF-1αは再生不良性貧血においてVEGFを調節している因子かどうか明らかでなかった。今後は、TPO、IL-1、IL-3、ILGFなどVEGF産生を調節している他の因子について検討する予定である。また細胞数が少ない問題を克服するために、骨髄単核細胞や、CD34陽性細胞の培養細胞を用いたり、間葉系幹細胞を用いて同様の検討を行う予定である。
|