2010 Fiscal Year Annual Research Report
静止期造血幹細胞のニッチ操作による新規移植療法の開発
Project/Area Number |
21791003
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉原 宏樹 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 助教 (90348706)
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Keywords | 移植・再生医療 / プロテオーム |
Research Abstract |
造血幹細胞移植は広く用いられているものの、放射線や大量化学療法が必須であり、これらの副作用を回避するためには、造血幹細胞を高率に生着させる必要がある。造血幹細胞は、支持細胞や細胞外マトリクスによって形成される微小環境、ニッチにより静止期が維持され、一個体における生涯の造血を行っている。本研究では、申請者がこれまでに明らかとしたMpl受容体/トロンボポエチンなどのニッチシグナルを制御することによって、静止期造血幹細胞の新規移植療法を開発することを目的としている。 蛋白は翻訳後修飾されるが、なかでも蛋白のリン酸化は、細胞内のシグナル伝達を制御することが知られている。造血幹細胞やニッチ支持細胞の静止、活性化にも蛋白のリン酸化による制御が深く関与することが推測されるため、研究代表者は造血幹細胞からのリン酸化プロテオミクス解析を試みた。リン酸化ペプチドが細胞からどの程度回収できるかを検討するため、K562細胞株を用いて、リン酸化ペプチドの同定数を検討した。細胞由来の蛋白100μgから、単回の質量分析計測定で数百のリン酸化ペプチドを同定することができ、合計20回の測定からは4,550のリン酸化サイト、1,901のリン酸化蛋白を同定することができた。これらのリン酸化情報をSTRINGデータベースで解析すると、蛋白同士の相互作用、シグナル伝達を網羅的に知ることが可能であった。マウスから100μgの造血幹細胞やニッチ支持細胞を準備することは難しいため、今後、解析可能蛋白量を微小化する技術の発展が不可欠である。また、臍帯血などのヒト由来造血幹細胞は、充分な細胞数を確保することができるため、今後のリン酸化プロテオーム解析に適している。これらから得られたリン酸化情報は、リン酸化を標的とした新規移植療法の開発につながると考えられる。
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