2010 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺発生異常におけるゲノムワイドCopy Number Variation解析
Project/Area Number |
21791006
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鳴海 覚志 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40365317)
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Keywords | 発生・分化 / ゲノム / 遺伝学 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
我々は前年度(平成21年度)に甲状腺発生異常(thyroid dysgenesis,以下TD)患者57名に対してCopy number variation(以下CNV)異常のスクリーニングを行い、18箇所のTD関連CNV候補領域を同定していた。本年度、これら18箇所の候補領域につきオリゴヌクレオチドアレイCGH法による再現実験を行った。その結果、2箇所(2症例)においてスクリーニングと同様のCNV異常を確認できた:(患者1)6番染色体の7遺伝子を包含する3.2Mbの微小欠失;(患者2)19番染色体の8遺伝子を包含する2.9Mbの微小重複。これら2領域には甲状腺疾患および甲状腺機能に関連する既知遺伝子は存在しなかった。CNV異常陽性TD2症例の臨床像を検討し、3点の臨床的特徴が明らかとなった:(1)甲状腺形態は異所性甲状腺(2)甲状腺外合併奇形の存在(口蓋裂および先天性心疾患)(3)軽度知能障害の合併。 以上、本研究はTDの発症機序および臨床像に関する以下の知見を、世界に先がけて明らかにした。(1)異所性甲状腺に関連する初めてのCNV異常を同定した(2)TD患者のうちCNV異常を有する頻度は約4%(2)CNV異常陽性TD症例の特徴は、甲状腺外奇形および知能障害。我々の知見は、TDの大部分がCNV以外の機序で起きることを間接的に示すものである。一方、低頻度ではあるがCNV異常を有する症例が存在する。今後このようなCNV異常陽性TD症例が蓄積されると、CNV領域に存在する遺伝子の機能解析を通じてTDの分子機序の解明が進むことが期待される。臨床的には、甲状腺外合併症が存在するTD症例では、積極的にCNV異常を疑うべきと考えられる。
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