2009 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質形成期における脳室下帯特異的発現遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
21791009
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
荒巻 道彦 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20338099)
|
Keywords | 脳室下帯 / 大脳新皮質形成期 |
Research Abstract |
ヒトの大脳新皮質では、先に誕生した神経細胞を後から生まれた細胞が追い抜くこと(inside-out pattern)で6層構造が形成される。大脳新皮質形成期に脳室帯で誕生した細胞は、法線方向に脳室下帯まで移動する。脳室下帯を構成する神経細胞は極めて特徴的な形態を呈し、多極性細胞と呼ばれる。そして脳室下帯で約24時間滞留した後に、多極性細胞から双極性細胞へと形態を変化させ、脳表面へ向かって移動を再開する。移動の再開と同時期に細胞体から神経線維の伸長を開始する。神経細胞は、神経線維を介して他の神経細胞と密に連絡し、複雑なネットワークを形成するようになる。ヒトは、大脳皮質の6層構造とそれに伴う複雑な神経細胞間の線維連絡を発達させたことで高次機能を獲得したと考えられている。特に、大脳皮質の6層構造はげっ歯類以降の哺乳類で獲得された特異的な構造で、2層から4層の発達が高次の脳機能に極めて重要な役割を果たしていると考えられている。最近の研究結果によると、脳室下帯を構成する神経細胞の多くは、大脳皮質へ移動した後に2層から4層を構成すると考えられている。すなわち、脳室下帯における神経細胞の役割を解明することでヒトの高次脳機能の獲得のメカニズムを明らかにするための端緒を得ることができる可能性があると考えられる。脳室下帯に特異的な発現を示す遺伝子の中でもUNC5D遺伝子に着目して解析を開始した。UNC5遺伝子は多くの動物種で保存されている遺伝子であることから、発生過程においても重要な役割を果たしていると想像される。本年度はまず、UNC5D遺伝子の発現パターンを、胎生期のマウスおよびヒトの大脳切片を用いて検討し、マウスにおける発現分布とヒトにおける発現分布の違いを明らかにすることを試みた。また、胎生期のマウスおよびヒトの検体を用いて遺伝子の発現量の比較を行った。これらの結果をもとに、UNC5D遺伝子発現の調節機構について次年度に詳しく検討する計画である。
|