2010 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質形成期における脳室下帯特異的発現遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
21791009
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
荒巻 道彦 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (20338099)
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Keywords | 脳室下帯 / 多極性細胞 / microRNA |
Research Abstract |
古くから哺乳類の大脳皮質は爬虫類や鳥類のそれと比べて明らかな構造の違いが存在することが認識されていた。特に大きく注目すべき点は大脳皮質の層構造で、げっ歯類以降の哺乳類では6層構造を形成している。この大脳皮質の各層を構成する神経細胞は互いに密に連絡して巨大なネットワークを形成している。特にヒトにおいては極めて複雑な神経細胞間の線維連絡を発達させたことで高次脳機能を獲得したと考えられている。近年の大脳皮質の形成機構の研究成果から、ヒトの大脳発生期においてマウスには認められないヒト固有の巨大な脳室下帯が形成されることが明らかになってきた。神経細胞間連絡を発達させ、精密な神経回路を形成させるための膨大な数の神経細胞を産生するために、ヒトは進化の過程で巨大な脳室下帯を発達させたとも想像される。本研究では、マウスの脳室下帯に特異的に発現する遺伝子(UNC5D)に注目して研究を計画した。この脳室下帯特異的発現遺伝子は、マウスの脳室下帯のみならず、ヒトの脳室下帯においても特徴的な発現が確認された。さらに、ヒトのUNC5D遺伝子のmRNA発現量をマウスのUNC5DのmRNA発現量と比較したところ、ヒトでの発現量がマウスと比較して低い傾向があることが分かった。続いてUNC5DのmRNA発現量を調節する因子としてmicroRNAの存在を想定して解析を行った。ヒトおよびマウスのUNC5Dの3'UTR領域を公開されているデータベースおよびnorthernblot法によって確定後、同配列に作用しうるmicroRNAをinformaticsの手法を用いて同定した。今後は、同定されたmicroRNAを介した発現調節機構が進化学的に持つ意味についてさらに研究を発展させていく計画である。
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