2010 Fiscal Year Annual Research Report
ダウン症候群精神遅滞の発症におけるOLIGの役割の検証
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21791019
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高木 栄一 独立行政法人理化学研究所, 神経遺伝研究チーム, 研究員 (50525590)
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Keywords | ダウン症候群 / 精神発達遅滞 |
Research Abstract |
ダウン症候群は、精神遅滞や特有な顔貌を主な特徴とする疾患で、ヒト21番染色体の全てまたは一部が3倍体となることで発症する。ダウン症候群精神遅滞の発症には、ヒト21番染色体上の遺伝子の過剰発現が関わっていると考えられているが、実際にどの遺伝子の過剰発現が関与しているのかは明らかになっていない。本研究課題では、精神遅滞様の記憶学習障害症状を示すヒト21番染色体に相同なマウス16番染色体部分トリソミーであるダウン症候群マウスモデルを用い、申請者が候補遺伝子と考えている21番染色体上の遺伝子oligodendrocyte lineage transcription factor (olig1及びolig2)のヘテロマウスと交配を行い、トリソミー領域内のolig遺伝子のみを3倍体から2倍体に戻すことにより、精神遅滞様症状が改善されるかどうかを明らかにすることを目的とする。まず、3か月齢のダウン症候群マウスモデル(Ts1Cje及びTs2Cje)を準備した。同時に、Ts1CjeマウスとOlig遺伝子欠損マウスを交配させて、Olig遺伝子のみを3倍体から2倍体に戻したダウン症候群マウスモデルTs1Cje-Olig(+/+/-)を準備した。ダウン症候群マウスモデル脳におけるオリゴデンドロサイト形成について検討した。興味深いことに、ダウン症候群モデルマウスの線条体、海馬、大脳皮質において成熟したオリゴデンドロサイトの数が減少していた。Olig遺伝子はオリゴデンドロサイトの形成に重要な役割を持つことが知られている。そこで、Ts1Cje-Olig(+/+/-)の脳におけるオリゴデンドロサイト形成を検討した。線条体、大脳皮質および海馬において、Olig遺伝子を2倍体に戻すことにより、CNPase陽性オリゴデンドロサイトの数が部分的に改善された。更に、Y迷路試験を行ったところ、Ts1Cjeマウスでは自発的選択行動に異常が生じていたが、Olig遺伝子を2倍体に戻したTs1Cjeマウスでは、その行動異常に若干の改善傾向が認められた。以上の結果から、Olig遺伝子がダウン症候群における精神発達遅滞の原因遺伝子の一つであることが示唆された。
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