2009 Fiscal Year Annual Research Report
ライソゾーム病に対する再生医療技術を応用した「埋め込み型酵素補充療法の開発」
Project/Area Number |
21791023
|
Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
田中 藤樹 National Research Institute for Child Health and Development, 生殖・細胞医療研究部, 共同研究員 (50415585)
|
Keywords | 再生医学 / トランスレーショナルリサーチ / 発生・分化 / 医療・福祉 |
Research Abstract |
ムコ多糖症患者に対して、酵素補充療法により大幅な症状の改善を認めるが、改善に至らないもしくは進行する症状もある。加えて毎週の点滴投与に対する本人、家族の負担はかなり大きいため、有効性が高く、かつ長期持続効果を有する治療法を研究する。具体的には、遺伝子導入されたヒト間葉系細胞をムコ多糖モデルマウスへ埋め込み、永続的な酵素補充の方法を開発、前臨床実験を行う。 本年度は、それらの実験を行う前提段階として、臨床的にムコ多糖症患者の臨床症状に対して、酵素補充療法により改善された症状と改善されない症状とを患者ごとに比較検討した。また、その治療期間中に認めた患者本人および家族への負担などについても検討した。 対象はムコ多糖症II型患者15例(軽症型小児7例、軽症型成人3例、重症型5例)。年齢は4歳~32歳。酵素投与期間は1年6ヶ月~2年6ヶ月。改善した点として尿中ウロン酸排泄量の減少、肝脾腫大の縮小、睡眠時無呼吸悪化の抑制、関節可動域の拡大などがあった。これらは欧米での報告とほぼ同様であった。また、精神運動発達遅滞、心臓弁膜症、骨変形などは改善が認められなかった。ムコ多糖症が単一症状としてよりも、各症状が複雑に絡み合って全体の臨床像を作り上げていることが医療者のみならず、患者、家族にも理解されるようになった。それにより、単一の症状のいくつかが改善されることで、全身状態の改善につながることが理解され、酵素補充療法が従来言われている効果よりも多くの症状を改善させていることが判明した。しかしながら、中枢神経系への影響、心臓弁、骨には酵素は有効に到達しないため、われわれの埋め込み療法を開発していく上で、高分子蛋白である酵素が到達できない場所、あるいは血流に乏しく酵素が到達しにくい場所に関して、新たな酵素製剤の開発、通過させ得る運搬体の開発、投与方法の検討なども加えて研究していく必要があることが判明した。
|
Research Products
(2 results)