2009 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素性虚血性脳症における神経細胞の樹状突起に発現する電位依存性チャネルの制御
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21791040
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
有光 威志 Keio University, 医学部, 助教 (60383840)
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Keywords | 樹状突起 / 電位依存性チャネル / 神経細胞 / 小児科学 / 新生児医学 |
Research Abstract |
これまでの研究から、低酸素性虚血性脳症において、グルタミン酸の興奮毒性によって神経細胞が障害されることが報告されている。神経細胞に発現するhyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated channel(HCN)1は、神経細胞の内在的興奮性を変化させる過程において決定的な意味を持つと考えられている。本年度は、マウス大脳皮質の分散培養神経細胞を用いて、神経細胞の興奮状態に依存したHCN1の分子細胞レベルでの制御機構を明らかにした。まず、電気生理学的手法とカルシウムイメージングにより、テトロドトキシン処理により神経細胞の興奮状態を可逆的に調節できる事が示された。次に、ウェスタンブロッティングを行い、神経活動が低下するとHCN1の総タンパク量は低下し、神経活動が元に戻ると総タンパク量が回復する事が示された。ここで、in vitroのグリコシダーゼによる糖鎖切断実験の結果から、HCN1タンパクは生理条件下においてEndo H耐性の糖鎖修飾を受けており、神経活動の低下により、これが減少する事が示された。さらに、細胞膜非透過性の架橋剤を用いて細胞膜表面の分子を架橋した後に、ウェスタンブロッティングを行った。その結果、細胞膜表面のHCN1タンパクは、神経活動の低下によって減少し、神経活動が戻ることによって回復する事が示された。これらの結果を踏まえて、電気生理学的手法を用いて、神経活動が低下すると、HCN1の機能が低下することを示した。 本研究より、神経細胞の興奮状態の変化は、大脳皮質神経細胞に発現するHCN1タンパクの総タンパク量と細胞膜表面での発現量を制御する事により、HCN1の機能をコントロールしている事が示された。これらのHCN1タンパクの制御が神経の内在的興奮性を調節し、神経細胞の興奮状態をコントロールしていると考えられる。
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Research Products
(2 results)