2009 Fiscal Year Annual Research Report
胎盤形成におけるサイクリックAMPグアニンヌクレオチド交換因子(Epac)の役割
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21791044
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
吉江 幹浩 Tokyo University of Pharmacy and Life Science, 薬学部, 助教 (50434014)
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Keywords | Epac / 胎盤 / 栄養膜細胞 / シンシチウム化 / 絨毛性ゴナドトロピン / プロゲステロン |
Research Abstract |
絨毛を構成する栄養膜細胞のうち、単核のサイトトロホブラスト(CTB)は、多核のシンシチオトロホブラスト(STB)へと分化・融合(シンシチウム化)し、妊娠維持に不可欠なhCGやプロゲステロン(P_4)を産生する。本研究では、ヒト胎盤組織におけるEpac1、Epac2の発現と栄養膜細胞の分化・融合(シンシチウム化)におけるEpacを中心としたcAMPシグナル伝達経路の機能について絨毛癌細胞株(BeWo細胞)を用いて調べた。妊娠初期・中期の胎盤組織においてEpac1蛋白質は、CTB、STBと絨毛外栄養膜細胞(EVT)の細胞質膜に発現していた。Epac2蛋白質は、STB、CTB、EVTの細胞質に発現しており、STBと比較してCTBとEVTに強く発現していた。また、両蛋白質ともに胎児血管内皮細胞および血管平滑筋細胞にもその局在がみられた。妊娠末期胎盤でもEpac1、Epac2は、STB、EVT、血管に発現していた。BeWo細胞に、PKA選択的cAMPアナログ(Phe-cAMP)を処置すると機能的分化マーカーであるhCG、P_4産生が高進したが、Epac選択的cAMPアゴニスト(CPT-OMe-cAMP)の処置でも増加した。また、P_4産生は、Phe-cAMPとCPT-OMe-cAMPの共処置によりさらに増加した。BeWo細胞のシンシチウム化に対する各cAMPアナログの作用を抗デスモソーム蛋白質抗体による免疫染色とDAPIによる核染色により評価した結果、CPT-OMe-cAMPやcAMP安定体(db-cAMP)の処置により多核のシンシチウム化細胞の数が有意に増加した。しかし、Phe-cAMPは、シンシチウム化には影響しなかった。また、このCPT-OMe-cAMPまたはdb-cAMPによるシンシチウム化は、PKA阻害剤(H89)の存在下でも確認された。さらに、Epac1とその標的因子として知られる低分子量GTP結合型蛋白質Rap1の発現をsiRNAにてノックダウンするとdb-cAMP及びCPT-OMe-cAMPによる細胞融合が抑制された。一方、Epac2をノックダウンしても、シンシチウム化には影響しなかった。以上の結果から、ヒト栄養膜細胞におけるcAMPを介した機能的分化とシンシチウム化にはEpacシグナル伝達経路が関与することが示唆された。
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Research Products
(4 results)