2010 Fiscal Year Annual Research Report
新生児中枢神経発達に影響を及ぼす母乳シグナル伝達物質の網羅的解析
Project/Area Number |
21791045
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
島村 英理子 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00267741)
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Keywords | 新生児医療 / 未熟児 / 中枢神経 / 発生学 / 母乳 |
Research Abstract |
これまでに我々は、ラットの経胎盤によるLIF-ACTH-LIF母胎間シグナル伝達が胎児神経前駆細胞の増殖を促すことを明らかにし、胎盤のシグナルトランスデューサーとしての役割を提唱してきた。ラット出生時の脳はヒトの胎生20週頃に相当し、出生後急速な発達を遂げることから初乳には脳発達に関わる重要な因子が含まれていると考えられる。本研究では、20週以降の母胎間シグナル伝達の胎盤に相当する媒体としてラット乳腺細胞および母乳を想定し、乳腺細胞のDNAアレイ解析、および母乳蛋白質の網羅的解析を行い、完全栄養管理下で実験を行うラット新生児の人工哺育システムを構築することを目的とした。(1)乳腺細胞のmRNA発現の動態:PO day(出産日)およびP4 dayの乳腺組織からmRNAを抽出し、DNAアレイによる発現遺伝子の網羅的解析を行った。POでの発現がP4に比べて高かったものでは、Gfra3、Igf1、Igf2が挙げられた。(2)PO,P1,P3,P14 dayのラット母乳を搾乳し、遠心分離操作により得た乳清画分を2次元電気泳動で展開し、主要なスポットをnano-HPLC-ESI-MS/MSで解析した。また、低分子蛋白およびペプチドは酸処理後にプロテインチップを用いて解析した。蛋白質の変動はPO vs Plで最も大きく39.1%であったのに対し、P1以降は各日数間の変動は約20%と一定であった。また主要蛋白質にはglial fibrillary acidic proteinが含まれていた。(3)特殊加工したゾンデにより、帝王切開した新生児を8時間毎の経口投与による完全人工哺育にて飼育する事に成功し、投与量をコントロールするシステムを確立した。以上の結果より、今後初乳中の主要な候補蛋白質の中枢神経発達への影響を人工哺育システムにて解析していくことが可能となった。
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