2010 Fiscal Year Annual Research Report
汎発性強皮症の皮膚線維化及び血管障害におけるFli1遺伝子恒常的発現低下の意義
Project/Area Number |
21791063
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅野 善英 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60313029)
|
Keywords | 膠原病 / 強皮症 / 線維化 / 血管障害 |
Research Abstract |
汎発性強皮症は皮膚および内臓諸臓器の線維化、微小血管障害、免疫異常を特徴とする原因不明の全身性疾患である。我々はこれまでに、Fli1遺伝子の恒常的な発現低下が本疾患における皮膚線維芽細胞および血管内皮細胞の恒常的活性化に関与している可能性を見出した。本研究はFli1遺伝子の発現低下が正常皮膚線維芽細胞および正常皮膚血管内皮細胞の機能に及ぼす影響を明らかにし、また動物モデルを用いてFli1遺伝子の発現低下が汎発性強皮症の皮膚線維化および微小血管障害といった臨床症状の発症機序に関与している可能性について検討することを目的としている。今回の研究により得られた結果を、(1)Fli1蛋白の転写後修飾(リン酸化、アセチル化、ユビキチン化)部位の同定およびその意義の検討、(2)正常血管内皮細胞におけるFli1遺伝子の機能の検討、および動物モデル(血管内皮細胞特異的Fli1欠失マウス)を用いたFli1遺伝子の発現低下の臨床的意義に関する検討、に分けて以下に記述する。 (1)Fli1蛋白の転写後修飾(リン酸化、アセチル化、ユビキチン化)の検討について 予備実験の結果、Fli1はproteaosomal pathwayにより分解されることが明らかにされている。Fli1のlysineをarginineに置換した18種類のmutantのprotein stabililyについて検討を行い、ユビキチン化が生じている可能性があるlysineの候補を絞ることができた。今後、更に検討を行い、Fli1蛋白のstabilityを制御している機序を明らかにする予定である。 (2)正常血管内皮細胞におけるFli1遺伝子の機能の検討 human microvascular endothelial cells (HDMEC)をFli1 siRNAで処理し、血管新生に関与する遺伝子の発現量について検討し、PDGF-B, SlP_1, VE-cadherin, PECAM1の発現が減少し,MMP-9の発現が亢進することを明らかにした。また、Fli1 siRNAで処理したHDMECを用いてmigration assay, apoptosis assay, cord formation assayを行ったところ、それぞれの実験において、migrationの亢進、apoptosisの抑制、cord formation活性の亢進が認められた。以上の結果から、Fli1は血管新生を制御する重要な転写因子であることが示された。次に、血管内皮細胞特異的Fli1欠失マウスを用いて創傷治癒について検討したところ、創傷治癒の著明な遅延が認められた。その原因として、新生した血管のmaturationに異常があることが示された。今後、様々な強皮症の潰瘍治療薬を用いて、同マウスの創傷治癒がどのような影響を受けるか検討する予定である。
|