2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21791084
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
神人 正寿 Kumamoto University, 大学院・生命科学研究部, 講師 (60401048)
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Keywords | 細胞・組織 / ストレス / 病理学 |
Research Abstract |
まず汎発性強皮症(SSc)の皮膚組織におけるVEGFレセプターの発現を検討し、VEGF2型レセプター(VEGFR2)およびVEGFR3の蛋白発現およびmRNA発現が正常組織に比べて増加していることと、D2-40染色にて強皮症ではリンパ管が減少および拡張していることを見いだした(Kuwata N et al, in submission and Honda N et al, in submission)。 つづいて、我々は血清可溶性VEGFR2濃度を本症患者において測定し、2つの知見を得た(Jinnin M et al. Br J Dermatol. 2009)。〓女性SSc患者の血清可溶性VEGFR2値はSSD患者および正常人よりも有意に高値を示した。2SLE患者群では健常群より血清可溶性VEGFR2値が有意に上昇していた。また血清可溶性VEGFR2値上昇例ではCH50の減少が見られたことから、血清濃度はSLEの病勢と相関しているものと思われた(Ogata Aet at, in submission)。 また、組織中VEGF-DおよびVEGFR3のmRNA発現が上昇していた(Honda N et al, in submission)。リンパ管が減少しているにもかかわらずVEGF-DやVEGFR3の発現が増加していることから、制御不能なVEGF-D/VEGFR3シグナルの活性化が逆に正常なリンパ管形成を阻害している可能性があると思われた。 次に低酸素マーカーである血清CA9濃度は強皮症の前駆状態であるscleroderma spectrum disorder (SSD)患者で健常群と比べ有意に減少していた。またCA9低値例ではdiffuse cutaueous SSc(dcSSc)が多くみられた。よって、CA9は本症の前駆状態において既に減少しており、本症のトリガーとなっている可能性がある。 さらに血清adiponectinもdcSSc患者で有意に減少していた。よって本症における低酸素状態の維持に関与している可能性がある。 以上より、CA9は強皮症のトリガーとして機能している可能性、本症においてVEGF-A/VEGFR2シグナルは増加している可能性、逆にadiponectinは減少し低酸素状態の維持に関与している可能性があること、リンパ管においても血管の同様の変化が存在している可能性があることが示された。 一方、低酸素刺激下での線維芽細胞での線維化関連遺伝子の誘導やマウスモデルの作成については、未だ安定した結果を得られておらず、今後研究を継続する予定である。
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