2009 Fiscal Year Annual Research Report
思春期児童における母親依存/分離の心の発達機構の脳科学的解明―不登校児との比較―
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21791136
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
西谷 正太 Nagasaki University, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50448495)
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Keywords | アタッチメント(愛着) / ヒト / 思春期 / 近赤外分光法(NIRS) / 前頭前野 / 神経内分泌学 / ホルモン / 脳 |
Research Abstract |
本研究は、思春期のアタッチメントに関わる脳基盤を解明するという大目的の下、思春期の各発達段階において、アタッチメントには脳の如何なる領域が関与しているか、また、その機能は発達を通して変化がもたらされるかを調べることを本年度の中心的な目的とした。我々はタナーの発達段階に基づき、定型発達・男児を3段階に群分けし、発達1度(9歳)群、発達3度(14歳)群、発達5度(20歳)群と定義した。実験は、養育者(母親、父親)とそうでない他者(女性、男性)の表情動画(無表情→笑顔、無表情→怒顔)を呈示し、それを視聴中の脳活動を近赤外分光法(NIRS)により測定し、条件間の比較を行った。これまでに乳児を対象に、母親に向けたアタッチメントに関わる脳領域が調べられているが、前頭前野腹内側領域が関与しているとされている。本研究で発達1度群を調べた結果、右前頭前野腹内側領域が母親の笑顔を呈示した場合に限り、他者の条件と比較して活動性の増加が見られた。故に、この発達群では、乳児期に報告された領域と同様に前頭前野腹内側領域が母親へのアタッチメントに関わっている可能性が考えられる。一方、発達5度群を対象に同様な実験を行った結果、この発達群では、いずれの条件においても、他者の条件と比較して違いは見られなかった。現在、これらの中間である発達3度群の実験を継続中であるが、発達1度群で見られた脳活動が発達5度群では消失している結果を鑑みると、アタッチメントに関わる脳活動の消失を決定づける変化がもたらされている可能性が考えられる。この時期は、ホルモン分泌に伴う思春期発達が著しいばかりか、通常、養育者との心の分離が進行する時期でもあり、不登校児が増加する時期とも重なっている。次年度は、さらにこの時期を調べていくと共に、不登校児、自閉症児など定型発達児とは異なる場合を比較検討し、アタッチメントの脳基盤の解明へと迫る。
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Research Products
(3 results)