2009 Fiscal Year Annual Research Report
末梢静脈から移植された神経幹細胞の運命:精神疾患への臨床応用を目指して
Project/Area Number |
21791139
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
吉永 敏弘 Sapporo Medical University, 医学部, 助教 (70404704)
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 再生医療 / 神経幹細胞 / アルコール |
Research Abstract |
これまでに我々は,胎生・幼若期のアルコール暴露による個体の認知・行動異常を改善させる脳内メカニズムとして,神経回路網維持・修復効果の重要性の観点から研究を進め,神経幹細胞の経静脈的移植がアルコール誘発精神疾患モデル動物の多動性と衝動性の異常を改善させることを明らかとしてきた。 今回,本治療法による記憶・社会認知機能の改善効果について解析を行った。胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)モデル群を用いた検討で,障害モデル群では,新奇物質探索試験における記憶・認知機能に加えて,社会性相互作用試験における社会コミュニケーションの各機能に異常を認めた。これに対し,モデル動物に神経幹細胞を移植した群では,それらの異常が正常対象群に近いレベルへ改善されることが分かった。また,モデルラットに移植した標識神経幹細胞が,数ヶ月後に帯状回,海馬,および扁桃体でGAD陽性の細胞(GABA作動性神経)に分化・成熟していることを観察した。 帯状回,海馬,扁桃体は会的情報の認知に重要割を担っているとされ,一方で代表的な精神疾患である統合失調症においてGABA系介在ニューロンの障害と認知機能障害の関連性が指摘されている。移植細胞がFASDモデルの脳領域に移行し,GABA作動性神経として分化・生存していることが,個体の社会的な行動の改善に関連している可能性,またFASDの病態にGABA系介在ニューロンの障害が関連している可能性が示唆される。
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Research Products
(6 results)