2010 Fiscal Year Annual Research Report
sertralineのendocytosis阻害作用に求めるうつ病の原因因子
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21791152
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Research Institution | St.Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
高橋 清文 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (70398965)
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Keywords | 脳・神経 / 向精神薬 / エンドサイトーシス |
Research Abstract |
エンドサイトーシスは、単細胞生物の食作用から細胞間の情報伝達に至るまで広く保存された生命現象である。一部の神経伝達物質の取り込みも同様のメカニズムに制御されることから、エンドサイトーシスの小胞分離に関与するタンパク質のひとつ、dynaminに着目した。dynaminはエンドサイトーシスの始まった細胞膜に結合してコイル状のオリゴマーを形成し、分子内のGTPaseにより得たエネルギーを用いてオリゴマーの形態を変化させ、細胞膜から小胞を分離する。抗うつ薬のうち選択的セロトニン再取り込み阻害薬に分類されるセルトラリンは、脳に発現するdynamin1のGTPaseを特に強く阻害する作用を有していた。また、全臓器に発現するdynamin2についても等しく作用し、dynamin1を持たない培養細胞でも、セルトラリン処理によりdynamin依存的なエンドサイトーシスが強力に遮断される。その阻害様式は酵素反応速度論と表面プラズモン共鳴測定により、dynaminのふたつの基質、GTPおよび脂質膜に対する混合型非拮抗阻害であることが判明した。興味深いことに、我々が研究を進めるdynamin1の変異体では、セルトラリンの阻害作用に対する感受性が野生型よりも高まる。通常は、脂質膜の無い条件下でもGTPase活性が保たれるが、この変異体は極めて低い値を示しており、より脂質膜に依存していると言えよう。以上の実験結果より、セルトラリンはセロトニン輸送体のアンタゴニストとしてだけではなく、脂質膜を介するdynaminのGTPaseに依存的なエンドサイトーシスの混合型非拮抗阻害剤としても作用していると考えられる。このように、薬剤の別の作用経路が明らかになることで、より特異性の高い新薬の開発のみならず、観察面でセロトニンより優れる新たなうつ病の原因因子を捉えることも期待できる。
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Research Products
(2 results)