2010 Fiscal Year Annual Research Report
覚せい剤・麻薬依存でのCa2+動態変化における調節機序とその機能的意義の解明
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21791153
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
芝崎 真裕 川崎医科大学, 医学部, 助教 (80412162)
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Keywords | 覚せい剤 / 神経可塑性 / シナプス形成 / actin depolymerizing factor / L型カルシウムチャネル / 細胞内Ca2+動態 |
Research Abstract |
昨年度の研究結果において、薬物依存症時に認められるL型電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)の発現増加に、Vps34が関与することを報告した。そこで、本年度は研究目的に従い、このVDCCが神経細胞のシナプス形成にどのような影響を与えるかについて検討した。まずシナプス形成に必要なactin depolymerizing factor(ADF)の変化について、L型VDCCαサブユニット半欠損(α1c(+/-))マウスを用いて検討した。その結果、野生型で認められる覚せい剤による報酬効果の形成は、α1c(+/-)マウスにおいて有意に減弱した。このような条件下、ADF発現量は、野生型において有意に増加し、この増加はα1c(+/-)マウスにおいて有意な減弱が認められ、ADF発現にL型VDCCが関与することが明らかとなった。そこでADFの機能損失を有するADF変異マウスを用いて、覚せい剤誘発報酬効果形成について検討した。野生型で認められる覚せい剤誘発報酬効果の形成は、ADF変異マウスにおいて有意に減弱した。そこで、側坐核領域における前シナプスのマーカーであるsynatohysinの変化について免疫組織学的検討を行ったところ、覚せい剤誘発報酬効果を獲得した野生型のマウスでは、生理食塩水処置群に比べ明らかな免疫活性の増強が認められた。一方、ADF変異型マウスではこの増強は明らかな減弱が認められ、覚せい剤によるシナプス形成の促進にADFが関与することが明らかとなった。以上の結果より、覚せい剤による精神依存形成にシナプス形成が重要な役割を果たすことが明らかとなった。また、覚せい剤誘発報酬効果形成にL型VDCCを介した細胞内Ca2+応答の亢進による、ADF発現の促進が重要な役割を果たすと推察される。
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