2009 Fiscal Year Annual Research Report
癌治療における放射線誘発非アポトーシス型細胞死の重要性とその分子機序の解明
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21791201
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
鈴木 正敏 Nagasaki University, 長崎大学医歯薬学総合研究科, COE研究員 (60515823)
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Keywords | 放射線 / 細胞死 / 老化様増殖停止 / マイトティック・カタストロフィ / ネクローシス / 生細胞イメージング |
Research Abstract |
本年度行った研究成果から、放射線照射によって乳癌細胞で誘導される1. 非アポトーシス型細胞死の系譜、2. マイトティック・カタストロフィ(MC)誘導機構を明らかにした。まず、放射線治療で用いられる10GyのX線を照射し、その後5日間にわたる生細胞イメージングを行うことで個々の細胞系譜を解析した。照射細胞の約60%は分裂期へ進行しなかったが、残りの40%は分裂期へ進行したものの、細胞分裂時に異常な細胞核分配様式を示すMCが必ず観察された。そのうち約90%は、分裂後に娘細胞同士の細胞融合が起こった結果、多数の細胞核を持つ細胞が形成された。その他、分裂期進行の有無に関係なく、ネクローシス様の特徴を示す細胞が全体で10%程度観察された。細胞老化マーカーである老化関連βガラクトシダーゼ染色の結果から、いずれの細胞系譜をたどった細胞でもマーカーに対して陽性を示した。すなわち、放射線誘発老化様増殖停止が乳癌細胞の主要な細胞死であり、一部の細胞では引き続きネクローシスが誘導されることが示された。次に、MC誘導細胞で生じた異常な細胞核分配の分子機構を調べるため、β、γ各チューブリンを照射24時間後に観察される分裂中期細胞で検出した。3個以上の分裂極をもつ細胞は1%未満で、ほぼ全ての細胞で正常な分裂極数が検出された。緑色蛍光タンパク質(GFP)でラベルされたヒストンH2Bタンパク質を導入し、染色体分配の様子を生細胞イメージングで解析した。放射線照射後では分裂極へ移動しない染色体が観察され、細胞分裂後の小さな細胞核の原因となることが明らかとなった。加えて、MCで生じる小さな細胞核領域ではCENP-Aが検出されなかった。すなわち、放射線により生じるDNA二重鎖切断が修復されないうちに分裂期へ進むと、動原体をもたない染色体断片が原因となってMCが誘導されることが示唆された。
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