2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21791204
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Research Institution | Ibaraki Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
島雄 大介 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (20404907)
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Keywords | 放射光 / X線 / 屈折コントラスト / トモシンセシス / 乳癌 |
Research Abstract |
今年度当初は、高エネルギー加速器研究機構のPhoton Factoryが震災の被害を受けたため、画像再構成フィルタの改良を進めることに計画変更したが、早期の復旧が実現し、予定通り3回のマシンタイムを得ることができたので従来の計画に戻した。最終年度である今年度は、前年度までに完成させた屈折型トモシンセシスのシステムにより、従来の吸収コントラスト法ではコントラストがつかない乳房試料(位相物体)を用いて、その描写能を評価した。 ラウエ型アナライザの角度位置は、暗視野の条件とそこから低角側と高角側へそれぞれ0.24 arcsec、0.10 arcsecずらした計3つを採用した。暗視野像では試料内に多数存在する嚢胞の輪郭が描出され、その中には石灰を含むと思われる分泌物を伴う嚢胞が存在することが明らかとなった。一方、低角側と高角側へずらした場合には上記の分泌物は不明瞭となったが、嚢胞自体は輪郭だけではなく表面の凹凸まで描出された。ただし、これらは投影像であり、すべての構造が投影方向に重なっているため嚢胞1つ1つは不明瞭であった。 トモシンセシスによりこれらの屈折強調画像を断層像に再構成することにより、従来法では全く描出できなかった試料の断層像(トモシンセシス像)を得ることができた。暗視野のトモシンセシス像では嚢胞1つ1つの輪郭が明瞭に描出され、石灰を含むと思われる分泌物はそれぞれが各嚢胞内に包埋されていることが明らかとなった。また、低角側と高角側へずらした場合のトモシンセシス像では嚢胞とその周辺の結合組織の様子を断層像として描出できることが示された。 本研究課題で開発した屈折型デジタルトモシンセシスを用いれば、従来法では描出できない乳腺腫瘍内の構造、さらには淡く石灰を含む分泌物を断層像として描出できることが明らかとなった。本成果は乳癌画像診断における画像解剖に新たな知見をもたらすであろう。
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