2010 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病による骨髄細胞の機能低下における酸化ストレスの関与と抗酸化治療の効果
Project/Area Number |
21791253
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
久保 正幸 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (60420519)
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Keywords | 骨髄細胞 / 血管新生 / 糖尿病 / 酸化ストレス / 活性酸素 / 前駆細胞 / 抗酸化 |
Research Abstract |
自己骨髄細胞を用いた心血管再生治療は虚血性疾患に対する有望な治療法であるが、治療効果が十分に得られない患者が散見される。その要因として、高齢や糖尿病の併発による骨髄細胞の機能低下が挙げられる。糖尿病では酸化ストレスが亢進しており、骨髄細胞の機能にも影響を及ぼすことが予測される。そこで、本研究では酸化ストレスの観点から糖尿病下の骨髄細胞の機能低下メカニズムを解明すると共に、抗酸化治療の機能改善策としての有用性を検証することを目的とした。本年度は、抗酸化物質の投与による酸化ストレスの軽減(抗酸化治療)によって糖尿病で低下した骨髄細胞の機能が回復するか否かについて検証した。実験動物として2型糖尿病モデル動物db/dbマウスを用い、抗酸化物質SOD-mimicを4週間連続皮下注射して治療群とした。なお、対照群にはVehicle (PBS)を投与した。4週間後に骨髄細胞を採取して、以下の実験を行った。採取直後のFlk-1/CD34陽性細胞(内皮前駆細胞)をFACSにて定量評価すると、対照群と比較して治療群で有意に高値であった(P<0.05)。培養3日後の細胞生存率は、2群間で有意な差はなかった。しかし、蛍光プローブDCFを用いて細胞内活性酸素量を測定すると、対照群と比較して治療群では低値となっており(P<0.05)、骨髄細胞内の酸化ストレスが軽減されていることが示唆された。また、培養7日後に内皮分化マーカーVE-cadherinによる免疫染色を行った結果、治療群では陽性細胞数の有意な増加が認められ(P<0.01)、内皮分化能の増強が示唆された。以上の結果から、糖尿病マウス個体に対する抗酸化治療によって、骨髄細胞の酸化ストレスを軽減することで細胞機能の低下を改善できることが示された。今後、糖尿病下の骨髄細胞における機能低下の改善策として抗酸化治療が有効な手段になり得ると考えられる。
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