2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポリコーム群タンパク質複合体を介する肝幹細胞の自己複製制御機構の解析
Project/Area Number |
21791258
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
上野 康晴 横浜市立大学, 医学部, 助教 (60375235)
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Keywords | 幹細胞 / 自己複製 / ポリコーム群タンパク質 / エピジェネティクス / 肝癌 |
Research Abstract |
ポリコーム群(PcG)タンパク質を介した肝幹細胞の自己複製制御機構を明らかにするため、肝幹/前駆細胞におけるPcGタンパク質複合体の標的遺伝子の同定とその役割について検討を進めている。本年度までにRing1Bコンディショナルノックアウトマウスを用いた解析を行い、Ring1B欠損時に脱抑制を受ける遺伝子を約900抽出した。平成22年度は、PcGタンパク質の下流遺伝子群候補として抽出されたこれら遺伝子群の機能について検討した。 これまでの我々の検討から、Ring1Bを欠損した肝幹細胞はin vitroにおいてクローン性コロニー形成能力を著しく損なうことが明らかになっている。そこで、はじめに、Ring1B下流標的遺伝子候補の中から、細胞増殖への関与が考えられるものに着目して機能を解析した。幹細胞の細胞増殖制御、あるいは発癌プロセスにおいては、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子2A(Cdkn2a)の機能が重要視されており、PcGタンパク質はこれらのサイクリン依存性キナーゼ阻害因子の発現制御に関わるとされている。そこで、肝幹細胞から調製したクロマチンを対象として、Ring1B抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)を行い、PcG下流遺伝子候補のプロモーター領域におけるRing1Bの集積状態を検討した。ChIP-PCR法による検討の結果、Cdkn2aのプロモーター領域においてRing1Bの集積が確認された。そこで、Ring1BとCdkn2aの二重欠損マウスを作製し、肝臓の器官形成に及ぼす影響を検討した。しかしながら、Ring1Bの単独欠損によって生じる肝発生初期の器官形成阻害は、Ring1BとCdkn2aの二重欠損によりキャンセルされないことが明らかとなった。肝幹細胞の自己複製においては、Cdkn2a以外の因子が重要な機能を持つことが考えられた。
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