2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規EMT誘導因子HOXB9による乳癌悪性化および癌幹細胞増加メカニズムの検証
Project/Area Number |
21791260
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林田 哲 Keio University, 医学部, 助教 (80327543)
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Keywords | HOXB9 / EMT / TGF β / 癌幹細胞 |
Research Abstract |
申請書への記載通り、転写因子HOXB9が上皮間質転換(Epithelial-Mesenchymal Transition:EMT)を生じることを既に示していたが、本年度の研究成果により、このHOXB9によって誘導されるEMTにTGF β経路の活性化の寄与が重要であることが示された。すなわち、HOXB9を導入された乳腺上皮細胞に対し、TGF β受容体Iの阻害剤を添加することで、間質から上皮の性質へ転換すること(MET)が確認され、各種EMTマーカーの変化、及び細胞遊走能・浸潤能の低下が認められた。一方で、ErbB経路の阻害剤を用いることで、細胞の遊走・浸潤能力は抑制されたが、細胞形態・マーカーの変化は認めらなかった。HOXB9によるTGF β経路の活性化はsmad2のリン酸化による確認済みであったが、さらに今回各種標的遺伝子(serpinel, CTGF, fibronectin, SPARC, Thrombospondinl)のHOXB9導入による高発現を確認し、これらは上記TGF β受容体Iの阻害剤により、発現抑制が認められた。このHOXB9によるTGF β経路の活性化と癌幹細胞の関係を明らかにするために、mammosphere assayによって自己再生能力を持つ細胞の培養を行ったが、HOXB9の導入によりsphere形成能は亢進し、TGF β受容体Iの阻害剤及び、TGF β受容体IIに対する中和抗体を用いることで、sphere形成能の抑制が認められた。これら結果より、HOXB9の導入によるEMT誘導とこれに伴う幹細胞の性質を持つ細胞の増加には、TGF β経路の活性が極めて重要であることが解明された。
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