2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規EMT誘導因子HOXB9による乳癌悪性化および癌幹細胞群増加メカニズムの検証
Project/Area Number |
21791260
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林田 哲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80327543)
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Keywords | HOXB9 / EMT / TGFβ / 癌幹細胞 / 血管新生 / 乳癌 / 予後因子 |
Research Abstract |
前年度までの研究により、転写因子HOXB9が上皮間質転換(Epithelial-Mesenchymal Transition : EMT)を生じること、このHOXB9によって誘導されるEMTにTGFβ経路の活性化の寄与が重要であることを既に示し、これに伴う幹細胞の性質を持つ細胞の増加がTGFβ受容体Iの阻害剤及び、TGFβ受容体IIに対する中和抗体を用いることで抑制されることを確認した。我々はさらにこのHOXB9による乳癌悪性化が、臨床検体において認められるか否かを観察した。浸潤性乳管癌患者141例を対象とし、抗ヒトHOXB9抗体を用いて免疫組織化学染色を行ったったところ、HOXB9陽性乳癌は49%であった。これらはHOXB9陰性乳癌に比べ、腫瘍径・腋窩リンパ節転移・核異形度で有意に進行し悪性度が高く、またluminal typeに比べbasal-like typeでは有意にHOXB9陽性率が高い事が示された。さらに、HOXB9陽性乳癌は有意に予後不良であり、多変量解析ではHOXB9発現がDisease-Free survivalにおける独立した予後不良因子であることが示された。また、前年度の基礎研究において、HOXB9は腫瘍血管新生を高度に誘導することが示されていたが、臨床検体においても、腫瘍組織中の微小血管の有意な増生が観察され、これにともないKi67陽性細胞の比率も高いことが示された。これらの結果は、基礎的知見が臨床病理学的所見と一致することを意味し、今後HOXB9を基礎的知見に基づいた、乳癌の予後因子として使用できる可能性が見いだされた点において非常に有意義な研究であると考えられた。
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Research Products
(3 results)