2010 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファチジルイノシトール三キナーゼ遺伝子変異が乳癌薬物治療に及ぼす影響
Project/Area Number |
21791266
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Shikoku Cancer Center |
Principal Investigator |
原 文堅 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター(臨床研究センター), 臨床研究部, 医師 (00507717)
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Keywords | 癌 / 遺伝子 / 医療福祉 / 臨床 / 薬剤反応性 |
Research Abstract |
近年、PI3Kのcatalytic domain(遺伝子コードはPIK3CA)に遺伝子変異は細胞の癌化に影響を及ぼし、下流のリン酸化活性を促進する恒常的活性化変異であることが分かった.乳癌においてもこの遺伝子変異は10-40%と高率に見られ、この変異はhelical domainをコードするexon9とkinase domainをコードするexon20に見られる.PI3K-Akt経路はドセタキセルの薬効耐性に関与しているとの報告があり、この経路を活性化するPIK3CAの遺伝子変異の存在は耐性機序の一因となっている可能性がある.本年度、我々はドセタキセル単剤による乳癌術前化学療法を施行された症例57例における治療開始前針生検パラフィン包埋標本を用いてPIK3CA遺伝子変異の測定を行った.QIAampDNAを用いDNAを抽出し、Hotspot近傍Primerを設計しPCRで増幅することで十分量の精錬されたDNAを用い、ダイレクトシークエンス法にて遺伝子変異解析した.次にこの結果と臨床病理データ、Docetaxel感受性との関係を検討した.結果、57例中8例(14.0%)にPIK3CA遺伝子変異を認めた.内訳はExon9に3例(5.3%)、Exon20に5例(8.8%)であった.PIK3CA遺伝子変異の有無と閉経状況、治療前腫瘍径・リンパ節転移・核グレード、ホルモン受容体、HER2状況には有意な相関は見られなかった.また、ドセタキセルによる病理学的奏効割合に関してもPIK3CA遺伝子変異の有無との間に有意な相関は認められなかった.今回の解析の結果は我々の仮説と異なるものであった.この原因としてサンプルサイズの不足、経年変化した可能性のあるパラフィンブロックからのDNA抽出し、ダイレクトシークエンス法を用いたことにより腫瘍細胞量が少ないサンプルでは偽陰性となった可能性が考えられた.
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