2010 Fiscal Year Annual Research Report
癌間質、血清蛋白プロファイリングから検証した癌転移形成能誘導因子の同定と臨床応用
Project/Area Number |
21791280
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
問山 裕二 三重大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00422824)
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Keywords | 大腸癌 / 血清予後因子 / 上皮間葉移行 / サイトカイン / ケモカイン |
Research Abstract |
消化器癌患者の末梢血中あるいは腫瘍組織中から検出される多くのバイオマーカーの研究により、従来の病理学的因子を凌駕する予後・悪性度の新たな予測因子として報告されてきている。一方,基礎癌研究においては癌幹細胞が上皮間葉移行することにより多臓器への遠隔転移を形成する概念も登場してきている。上皮間葉移行を誘導因子として、癌周囲stromaが産生する液性因子が報告されているが、単一因子に依存するものではなく、複数の因子が融合的に関係し癌に好条件の転移機構を構築している可能性が示唆される。今回の研究の目的は、この液性因子の網羅的解析により、術後再発を来たしてくる患者の究極的な選別方法を確立することにある。つまり、それらの因子が末梢血中にいかに反映されているか?さらに,それらを術前に検出可能であれば、術後再発を来す患者のみに抗癌剤治療を施行することが可能で、医療経済的にも大きな貢献が可能で、さらには抗癌剤治療を必要としない患者のQOL向上が期待できる。 当外科学講座にて大腸癌と診断され、術後遠隔転移再発を認めた症例と遠隔転移再発を認めない患者の摘出標本の末梢血を使用し,Human Cytokine Antibody Arrayにて再発群で2倍以上に発現の高い液性因子を同定した。(HGE, CXCL10, CXCL16, ENA78)さらにすでに300症例の予後が判明している症例の血清にて,今回同定した液性因子の再発規定因子としての意義ならびに臨床病理学的因子との関係も検討した。癌部ならびに癌間質のHGF発現と血清中のHGF濃度が有意に正の相関を認め、血清中のHGF濃度を測定することが、Stage IIならびにStage III大腸癌それぞれ術後再発を規定する因子として、現在確定している予後因子に比べ、高いspecificityとsensitivityを示した。また腫瘍局所浸潤性リンパ球に関与することが知られている複数のケモカイン(CXCL10, CXCL16, ENA78)も新規大腸癌予後規定因子として確認され、それらは遠隔転移臓器に発現し、そのレセプターを持つ癌細胞の臓器特異性転移に関与する可能性を示した。
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