2009 Fiscal Year Annual Research Report
HMGB-1制御による肝虚血再灌流障害抑制法の開発と肝移植への応用
Project/Area Number |
21791306
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
篠田 昌宏 Keio University, 医学部, 助教 (50286499)
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Keywords | 肝虚血再灌流 / HMGB1 / サイトカイン / 治療 / 体外循環 / 吸着治療 / アデノウイルス / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
研究成果:(1)HMGB-1の阻害タンパクであるHMGB-1 A Boxを遺伝子導入するアデノウイルスベクター(Adex-HMGB1ABox)の作製が完了した。本ウィルス培養上清においてウエスタンブロット法により当該ウィルスがAboxを産生していることが確認された。(2)薬剤誘導性劇症肝不全ラットモデルにAdex-HMGB1ABoxを投与し、その血清パラメータおよび生存率の改善が確認されその治療効果が確認された。現在、肝虚血再灌流ラットモデルが安定して作成できる段階となりAdex-HMGB1ABoxの投与実験に着手している。(3)先進実験として、薬剤誘導性劇症肝不全ブタモデルに対して、HMGB1吸着カラムを用いて体外循環を施行し、本カラムがHMGB1を吸着することを確認した。技術的にブタ体外循環が安定して施行できる段階となり、現在、虚血再灌流ブタモデルの作成がほぼ完了し、今後、虚血再灌流ブタモデルに対して同体外循環吸着実験に着手する段階である。 考按:本年度の研究成果により、実際にAboxを産生することが確認できたアデノウィルス(Adex-HMGB1ABox)が完成し、肝虚血再灌流ラットモデルが安定して作成できる段階になり、いよいよ実際にウィルス投与による治療効果についての検討がなされる。今後、人工肝臓を用いた臨床応用に向けた治療法の開発へと期待がもたれる。また、大動物(ブタ)において実際に体外循環が技術的に安定して施行できるようになり虚血再灌流ブタモデルにおけるHMGB1吸着カラムの有用性についての検討も始まることとなる。世界的に不足しているドナーソースの拡大を目指し、いわゆる心停止ドナーからのグラフトも活用すべく、効果的な肝虚血再灌流障害の治療法の開発への一歩として本年度の研究成果は非常に意義深いものである。
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