2010 Fiscal Year Annual Research Report
カブトムシから単離・改変された抗菌ペプチドによる人工血管感染制御
Project/Area Number |
21791318
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
名知 祥 岐阜大学, 医学部附属病院, 医員 (30452155)
|
Keywords | 外科 / 感染制御 / 抗菌ペプチド |
Research Abstract |
本研究では予後が不良である人工血管感染防御に対し、新たな治療法を開発することを目的とし、制御物質として新しい感染症の治療手段として臨床応用が期待されているカブトムシから単離・改変された抗菌ペプチドを用いて研究を行った。 当初の研究計画ではすでに研究報告のあるMRSA腹膜炎マウスモデルを作成し、抗菌ペプチドを散布または含浸させた人工血管を使用して感染予防効果を検討する予定であった。しかし、実際の臨床ではMRSA腹膜炎自体の発症も珍しく、発症した患者に対して人工血管置換を行う病態が考えにくい事から、より臨床的にも可能性の高いモデルとして、敗血症・腹膜炎モデルである盲腸穿刺腹膜炎(CLP)マウスモデルを作成、抗菌ペプチドを投与する事で治療効果を検討する事とした。 実験方法として、マウス(C57BL/6J jcl)を用いてCLPモデルを作成した。回盲弁直下の盲腸を結紮し、18G針を用いて2カ所穿刺した。そのまま閉創する群(control群)、抗菌ペプチドを0.5mg腹腔内投与してから閉創する群(peptide群)を作成した。生存日数とCLPモデル作成4時間後にエンドトキシン、IL-6、TNF-αを採血して測定し、生存日数を調べた。 結果として7日打ち切りで平均生存日数を見てみると、Control群に比してPeptide群は有意に生存日数が延びていた。また、IL-6、TNF-αもcontrol群に比してpeptide投与群で有意に低値を示し、血中エンドトキシン値も低値であった。 以上から抗菌ペプチドは、CLPモデルへの投与で有意に生存日数を延ばすだけでなく、炎症反応も抑え治療効果があると考えられた。これまでMRSAや緑膿菌といった単独の菌を腹腔内投与した実験での抗菌ペプチドの効果報告はあったが、CLPモデルに対する今回の結果からより臨床的な腹膜炎モデルでも抗菌ペプチドの効果がある事が分かった。当初の目的である人工血管感染に対する感染予防効果へ臨床応用も可能であると示唆された。
|