2009 Fiscal Year Annual Research Report
乏突起神経膠腫の染色体ヘテロ接合性の消失に関連した予後を規定する分子機構の解明
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21791347
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
甲賀 智之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40456124)
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Keywords | 脳腫瘍 / 神経膠腫 / 乏突起神経膠腫 / myelin transcription factor 1-like / 遺伝子発現 / 治療反応性 / 予後 |
Research Abstract |
乏突起神経膠腫は最も多い原発性脳腫瘍である神経膠腫の一種で、罹患率は10万人あたり0.27-0.35である。乏突起神経膠腫の多く(50-80%)に1p19q染色体ヘテロ接合性の消失(LOH)が認められ、この染色体異常を伴う乏突起神経膠腫は、伴わないものよりも治療反応性や予後が良いことが知られており、補助診断法としても、染色体異常の検査が応用されるようになっている。このように乏突起神経膠腫では、染色体レベルの異常に対する知見が深まりつつあるが、これによってもたらされる発癌までの遺伝子・分子細胞学的機構の詳細や、良好な治療反応性をもたらす機序は未だ解明されていない。我々は以前の研究の結果からMyelin transcription factor 1-like (MYT1L)という神経細胞の遺伝子群の転写にかかわり、さらにその分化増殖に関与している可能性のある転写因子が染色体異常を伴う乏突起神経膠腫に高発現していることに注目した。MYT1Lをはじめとしたニューロン特異的な遺伝子の高発現と予後の相関について検証することを手始めに、こらら分子の発現と染色体転座による遺伝子異常との関連、MYT1Lのこれら神経前駆細胞の増殖や分化に与える影響を検討することで、診断のみならず、将来の治療に役立つ重要な知見がもたらされると考え研究を行っている。 平成21年度の研究においてわれわれは、MYT1Lに対するポリクローナル抗体を作成し、実際の乏突起神経膠腫を含む脳腫瘍検体における、MYT1Lのタンパク質発現の有無について検証を行った。今後、それらの抗体が免疫組織染色にも使用しうるのかを検証するとともに、その発現と治療反応性あるいは予後との相関につき検証を行っていく予定である。
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