2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21791353
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
川岸 久太郎 Shinshu University, 医学部, 助教 (40313845)
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Keywords | 神経再生 / 神経機能再生 / 嗅覚 |
Research Abstract |
本研究において明らかにしようとしている点は、再生した嗅神経からの嗅覚情報はどのように嗅皮質に神経連絡するか、すなわち新たな神経回路がどのように再構成されたかである。 我々の研究では新生児ラットの一側嗅球を除去し成育させると、除去側の前脳が、嗅球が存在した頭蓋骨内に増大することが明らかとなった。また、増大した前脳領域、特に側脳室周囲から神経幹細胞が移動してくる部位、Rostral Migratory Stream(以下RMS)の断端には糸球体様の構造が新たに形成されていることも明らかになった。 さらに、本来側脳室周囲から前下方に細胞移動が起こるはずのRMSが、一部障害例では前脳前方に移動している例や、本来のRMSが2方向に分かれている例が存在することも明らかとなった。 いずれの例でも、嗅覚機能を持った前脳増大領域を持つラットでは、RMSを移動する側脳室周囲由来の神経幹細胞が断端で糸球体様の構造を新たに形成しており、側脳室周囲由来の神経幹細胞が新たな神経回路形成に直接的に関与するものと考えられる。 従来の研究では、生体で増殖した神経幹細胞がニューロンに分化することは知られていた。しかし、障害を受けた脳で自然に長い神経軸索を伸長させ、皮質まで到達し、新たな神経回路を形成し、さらに実際に機能する、ということはこれまでの中枢神経系には認められない。このため、障害を受けた脳の修復機能が明らかにされれば今後の脳機能障害の治療に大きく寄与するものと考えられる。
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