2010 Fiscal Year Annual Research Report
悪性グリオーマに対するWT1免疫療法における免疫応答の解析
Project/Area Number |
21791358
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
千葉 泰良 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (90533795)
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Keywords | 悪性グリオーマ / Wilm's Tumor 1 (WT1) / 免疫療法 / 免疫逃避 / 腫瘍浸潤Tリンパ球 / HLA class 1 / 制御性T細胞 / テモゾロミド |
Research Abstract |
本研究では、まずマウス脳にマウスグリオーマ細胞株を移植してWT1免疫療法を施行し、テモゾロミド(TMZ)単独や併用療法との生存率の違いや、腫瘍組織内での免疫応答の違いなどを検討する予定であったが、使用しているマウスグリオーマ細胞株でWT1発現が少なかったため、遺伝子導入を行い、WT1過剰発現マウスグリオーマ細胞株の作成を行った。そして、WT1過剰発現グリオーマ細胞株が安定的にマウス脳に生着できるよう、実験手法の微調整を行い、現在は、安定的に担脳腫瘍マウスモデルが作成できるようになったところである。 次にWT1免疫療法が施行された前後で手術が行われた患者から脳腫瘍組織を採取し、病理組織学的にWT1免疫療法における脳腫瘍内免疫反応を検討した。合計14症例から検体が得られ(その大部分はWT1免疫療法が無効で再増大を来したために摘出術が行われた)、その結果、CD4陽性リンパ球の浸潤がWT1免疫療法後に有意に減少しているが、CD8陽性リンパ球の浸潤は変化を認めなかった。また、WT1発現、HLA class1発現が有意に減少していたことが示された。これは、WT1療法の無効症例では、腫瘍細胞が免疫逃避機構が働き、リンパ球の浸潤に必要なWT1とHLA class1の発現が減少している事を示している。これにより、WT1療法を行ったにも関わらず、リンパ球浸潤が増加出来なかったと考えられた。この知見は、脳腫瘍に対する免疫療法後、脳腫瘍に免疫逃避機構が働いていることを示した初めての成果であり、今後、WT1免疫療法の効果をより確実なものにするためには免疫逃避機構を無効にする方法を編み出す必要性を示唆していると考えられる。この成果については現在論文作成中であり、近々投稿予定である。
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