2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21791429
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大谷 法理 東北大学, 大学院・歯学研究科, 大学院非常勤講師 (60338879)
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Keywords | 麻酔薬 / 覚醒状態 / デクスメデトミジ / 術後痛 / エスモロール |
Research Abstract |
近年の高齢化社会、ならびに医学の進歩によりこれまでは行われなかった高齢者に対する複雑な手術が行われるようになり、全身麻酔手術後には麻酔薬の副作用の一部であると考えられる認知機能障害や覚醒遅延などが複雑な疼痛状態とともに問題視されている。一方、新生児をはじめとする小児麻酔領域でも、麻酔薬による発達障害などが問題視されるようになってきた。また術後環境がこのような発達状況に影響を与えることも示唆されている。そこで作用機序の明らかとなっていない麻酔薬ならびに関連する薬剤の麻酔、覚醒作用に対するメカニズムを調べ、さらに疼痛制御系に与える影響を検討することにより、速やかな覚醒を示し、認知障害などの副作用がなく、疼痛状態をなるべく改善できるような理想的な回復過程を示す麻酔法を確立することを目的とした。 臨床研究において、デクスメデトミジンを通常使用濃度より高い濃度で使用し、セボフルレン麻酔下で(1)BISを一定に保つための麻酔必要量(2)覚醒時間(3)術後疼痛状態(4)副作用の有無、発現頻度の検討をおこなった。デクスメデトミジンの高濃度により麻酔必要量は減少し、術後疼痛状態は著しく改善したが、覚醒時間には変化がみられなかった。 動物実験では、術後痛モデルラットを用い、鎮痛効果を薬剤投与後、赤外線熱刺激試験にて経時的に評価を行った。超短時間性ベーター遮断薬であるエスモロールの投与により、濃度依存的な鎮痛効果が見られたが、その効果時間は一時的なものであった。また、同時に測定した、循環動態変化は心拍数で約15%、血圧で10%の減少効果があった。しかしながらこれらの循環動態変化は疼痛閾値に影響を、平均血圧には影響を与えなかった。エスモロールの脊髄内投与は有効な術後鎮痛方法となりうるが、今後、作用時間を長くする工夫が必要であると考えられた。
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