2009 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄マイクログリアの活性化が術後痛に果たす役割-神経障害性疼痛との比較検討-
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21791431
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
三枝 里江 Gunma University, 医学部, 医員 (10400772)
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Keywords | 術後痛 / 脊髄グリア細胞 |
Research Abstract |
これまでの疼痛研究のほとんどはニューロンをターゲットにしたものであったが、近年、脊髄グリア細胞(マイクログリアとアストロサイト)が単なるニューロンのためのhousekeeper的な役割をしているだけではなく、侵害刺激により活性化し、疼痛を増強することが明らかになってきた。我々のグループは、脊髄グリアの活性化が術後痛に関与することを見出してきたが、マイクログリアとアストロサイトのそれぞれの役割については不明である。マイクログリアについては、神経因性疼痛や炎症性疼痛に大きく関与することが報告されているが、術後痛の場合はどうなのか、詳細に解析することは術後痛の機序の解明に大きく貢献する。また、minocyclineのように臨床に使用できるマイクログリア抑制薬が存在するため、治療にも役立つ可能性がある。 そこで、平成21年度はラット術後痛モデルで脊髄マイクログリアの活性化と感覚過敏との関係を検討することを目的に研究を行った。術後痛モデルの実験動物は250~270gの雄SDラットを用い、Brennanらの方法(Pain 1996 ; 64 : 493-501)によって術後痛モデルを作成した。その際、脊髄のマイクログリアを抑制するminocyclineおよび選択的p38MAPK阻害剤SB203580を、手術前に投与し、その後は1日2回(朝夕)、術後3日目まで連日投与を行った。感覚過敏はvon Frey filamentsを用いたup-down methodによって、連日逃避閾値を測定することで判定している。得られた結果の用量-反応曲線を作成し、平成22年度に行う神経因性疼痛モデルに投与した場合の効果と比較する予定である。さらに、脊髄でのマイクログリアとアストロサイトの発現の変化について、免疫染色を行い、陽性細胞の数や大きさの変化を解析することによって、免疫組織学的な検討を現在行っている。 今後は、現在の術後痛モデルでの研究に加え、さらにラット神経因性疼痛モデルを用いマイクログリアが感覚過敏を惹起する時期を確定することで、脊髄グリア細胞が疼痛に及ぼす影響を明らかにできるよう計画を進めていく。
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